※ぬるい性描写が入ります


(どうしよう、どうしよう、どうしよう)

ぐるぐるとまとまらない思考の中で、なまえは必死に服をかき集め、その場を後にした。とにかくクザンが昨夜のことを覚えていませんように、と願うばかりである。自分自身ですらまったく覚えていないのだ、大丈夫。さして根拠の無い自信でなんとか精神を安定させた。
そんな時に限って現れるのがこの男である。

「フフフ、そんなに急いでどうした?なまえチャン」
「うわわわわ!!!ドドドフラミンゴ!?」
「おいおい、真昼の幽霊でも見るような顔をするなよ。傷つくじゃねえか」

あまりにも心臓に悪い、と恨めしそうにドフラミンゴを睨み上げた。
一方、普段の沈着とした態度とは打って変わったなまえの様子にドフラミンゴも訝しげに観察していた。走ってきたせいかもしれないが、蒸気した赤い頬。一晩寝かせた皺くちゃの服を今着てきましたと言わんばかりの乱れよう。そうして挙動不審に彼女が出てきたホテルを見て…ドフラミンゴはひとつの仮説にたどり着く。

「それで、どこの男と一夜を共にしてきた?」
「!?!?」

雷が打たれたように驚いて、真っ青になるなまえの顔。もはやドフラミンゴの仮説は確信に変わっていた。

「フッフッフ、後悔させてやるくらいブチ犯してやるから、そう怯えるな」

いま再び、なまえに死刑宣告が下される。サングラスの奥に光る瞳は、笑ってはいるまい。怯えるな、と言うほうが無理な話だった。


(うん……?)

ドフラミンゴは最初こそ腸が煮えくり返る思いではあったものの、冷静さを失ってはいなかった。なまえの服を脱がしている途中から違和感を覚えていたためだ。
まず情事特有のにおいが彼女から一切しないこと。また、服装は乱れているものの彼女の肌は汗でべたついた手触りもなければ、男の愛撫らしき形跡も無い。極めつけに、彼女の膣内を探り当てたところで、完璧に彼女の思うような性交をした事実はないということが判明した。

(となれば、後はどういった経緯で、どの男とか割り出せば自ずと答えは出るってわけだ…)

どちらにせよ一夜を明かしたのは動かしがたい事実なので、彼女を責める手を緩めるつもりは無かった。今後一切、そういった不祥事を起こさないようにきちんと躾けておかねばなるまい。

「ド、ドフラ…ぁあっ」
「さァてなまえチャン、おれほどの男がいながら、いったいどこの馬の骨を誘惑してきたのか…答えてもらうぜ」
「誘惑なんて、し、てな ひぅっ!?」

くいっと人差し指を突き立てれば、かわいいくらいに反応が返ってくる。口では憎らしいことを言いながらも、体は実に正直であった。そういうところもドフラミンゴが気に入っており、また口を割らせるには有効な手段であることを心得ている。

「思い出せよ、なまえチャン。昨日はどこで、何をしていたんだぁ?」
「ふっ… あ、バーで……んんっ、クザンに…」
「青雉に?」

意外な名前が出てきて、ドフラミンゴは少し意表を突かれる。

「そ、それで、一緒にお酒を飲んで……」
「気づいたらホテルで目が覚めた、ってところか?」

以前から多少なりともなまえの酒癖を知っていたドフラミンゴは容易にその後の展開が知れた。
さて、問題はいったいなぜ大将ともあろうお方が手も出さずになまえと一夜を過したのか。ただ単に介抱しただけなら、なまえの服が乱れている様子もおかしい。わざと彼女の服を脱がした、というのが正しいだろう。つまり意図的になまえは男と一夜を過した事実を作っているのだ。
それでなまえを気にかけているドフラミンゴが嫉妬するのも分かるだろうに。なにしろ、海軍本部の間でこの二人の噂は有名だからである。

では要するにクザンはドフラミンゴにけしかけたのだ。何のために?決まっている。ドフラミンゴのなまえに対する真意を測るために。普段から青雉と親しいという話は聞かないだろうから、彼一人の思惑ではないだろう。業を煮やした海軍にいるババアか、はたまたお節介そうな同僚とその上司か。
何にせよ、ここまでお膳立てされれば乗らないわけにいかない。

「あんまりおれを妬かせるなよ、なまえチャン」
「……? ドフラミンゴ?」

急に声色が優しくなったことを受けて、なまえは不思議そうに名前を呼んだ。だというのに、ずぶずぶと雄が出入りするものだから上手く言葉が繋げられない。そういうのも分かっていてドフラミンゴは一方的に話しかける。

「フッフッフ、愛してるって言ってんだ」


(120926)

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