海軍本部に設けられた一室、なまえはそこに篭り熱心に銃の手入れをしていた。バラバラにされたパーツをひとつの銃に組み立てる速度は熟練した様子が伺える。弾を装填する動作の最中に、突如電伝虫がかかってきた。

「はい?」
『も〜〜、ようやく繋がりました!』
「その声は…たしぎちゃん?」

同期の馴染み深い顔だとなまえは嬉しそうに笑った。といっても一応はなまえの方が少し年上だ。
しばらくお互いに近況を話し合う。相変らずたしぎはスモーカー大佐の腰巾着だそうで、やり甲斐はあるだろうが実に大変そうだ。
なまえは先日つるのところへ帰還したこと、それからまたあのドフラミンゴにしてやられたことを打ち明けた。途端にたしぎの心配げな苦言が呈される。

『スモーカー大佐からも聞きましたが、ドフラミンゴについてはいい噂を聞きません!なまえさんも充分分かっているとは思いますが、あまり近づきすぎないことです。海賊はどこまでいっても海賊なんですよ』
「うん……そうだねえ」
『気になるようでしたら、ドフラミンゴの真意を確かめてみたらどうですか』
「どうやって〜?」
『え!?えーと、そ、そういうのは別の人に聞いてください!』

色恋沙汰となると恥ずかしそうにたしぎは通信を切った。言いたいことだけ言われて、なまえの悩みはますます深まるばかり。しかし、なるほどドフラミンゴの気持ちを知ることは大事である。ただ面白い海兵だとからかわれているのか、まさかとは思うけど多少なりとも本気で相手をしてくれているのか。前者の線が濃厚だが…はて、どうしたものかしらとなまえは首を傾げた。

どうにも塞ぎこんでいては解決しないと、なまえは気分転換に"そうだ、シャボンディ諸島で遊ぼう"という結論に達した。ただの現実逃避に他ならないが、本人は至って真面目に身ひとつでひらりと本部を抜け出す。
無法地帯ではあるものの、行き着けである18番グローブのバーに立ち寄る。勿論、このようなところで海軍の服装などしていれば海賊たちの視線を浴びることになるので普段着だ。

(今日は私のゆるゆる正義もお休みってことで)

こんなこと口に出せば、センゴク辺りからどやされそうだが黙ってカクテルを注文した。

「おおっと、なまえちゃんじゃないの」
「……見なかったことにしますから、職務に戻って下さい大将」
「俺のだらけきった正義も今日はお休みってことで」
「ううっ、この人と同じ思考回路なのが嫌だ…!!」

現れたのは大将こと青雉、クザンだった。このような場所で仮にも上司でもあるクザンと出会ったことを、苦々しげになまえは眉を顰めた。が、クザンは一向に気にすることもなくちゃっかりと隣に座り、ワインを頼んでいる。こうなりゃ自棄酒だと、なまえはぐいっと飲み干してもう一杯頼んだ。これがきっとよくなかったのだろう、となまえは振り返る。


「え……?」

見知らぬ部屋、おそらくビジネスホテルのような場所。カーテンの隙間からこぼれる朝日。まっさらなシーツの上に肌蹴た寝巻きで横に転がる…クザン。うん、クザン?

「あれ、うそ」

顔から血の気が引く音をなまえは確かに聞いたのだった。


(120522)

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