ひとつ深呼吸をついてから、扉をノックした。お入り、と向こう側から懐かしい声がする。果たして出迎えた優しげな老婆、つるはそこにいた。

「お久しぶりです、おつるさん!」
「おやおや、お帰りなまえ。遠征はどうだったかい?」
「はい。数々の海賊たちを蹴散らしてやりました!!」

嬉しそうな顔をしながら、なまえはつるに討ち取った数の手配書を見せた。そのうちのひとつをぺらりと後ろから伸びてきた手によって攫われる。

「ほ〜、これを少尉殿がお一人で、ねェ。フッフッフ、少しは成長したんじゃねェの」
「げっ…ドンキホーテ・ドフラミンゴ……様」
「取ってつけたように呼ぶくらいなら、呼び捨てで構わないぜ?なまえチャンとおれの仲だしなァ」

次いでドフラミンゴが肩に手を伸ばそうとしてきたのを、慌ててなまえは避ける。七武海とはいえ、こう何度も海軍将校が遅れを取ってはならないという矜持からだろう。
ドフラミンゴはなまえの行動に別段機嫌を損ねた風でもなく、むしろ久々の再会を喜ぶように両手を広げた。

「フフフフ、つれねェな…もっとこう、おれの胸に飛び込んでくれてもいいんじゃねェか?」
「まったくなまえにちょっかいを出すのはおやめと前から言っているのに。ドフラミンゴ、もう会議は終わったんだ。とっとと自分の船にお戻り」

用は済んだとばかりに、ひらひらとつるはドフラミンゴを追い出す仕草をした。もっとも素直に従う男ではない。

「おいおい。それはないぜ、おつるさん。こんなくそつまんねェ会議の後に訪れた幸運を逃す手はねェだろ!?」
「あっ、そういえば今日はクロコダイルの後継についてのお話でしたね」
「ワニ野郎は呼び捨てかよ、妬けるじゃねェの。…フッフッフ!!」
「彼は七武海の称号を剥奪された身ですから、もう敬う必要はないかと」
「…フフ、おれは敬われた記憶がこれっぽっちもないなァ」
「あら、ドフラミンゴ様は意外と鈍感でいらっしゃいますこと」

なまえはじろりと牽制するようにドフラミンゴを睨んでから、つるに視線を戻す。

「しばらくはマリージョアに滞在します。報告書は後ほど」
「ああ、今日はゆっくりお休み」
「では…失礼します」

敬礼をしてから、なまえは退室した。そしてさも当然のように隣に立つ男をもう一度睨み上げる(癪なことに、彼の顔を見るには首が痛くなるほど見上げねばならない)。

「お帰りになるならあちらですよ」
「……ウ〜〜〜…!!…海軍ってェのはどうしてこう冷たいやつらばっかなんだ?」
「海賊に優しくする者はここにいません。どこぞでくたばってくださった方が、世界のためです。では、さようなら」

手短に捨て台詞を吐いて、なまえはそそくさと立ち去ろうとした。が、体はあらぬ方向へと動く。してやられたとなまえは腹立たしげに舌打ちをした。未だに手の内は明かさない男だが、彼の指がついと上下するだけで簡単に体の自由が奪われる。

「ドフラミンゴ様、私は疲れているのです。帰らせてください」
「なァに…心配せずとも、おれの船であつーくもてなしてやるさ、フフフフフ」
「人の話聞いてます?そういうの、ありがた迷惑っていうんです」
「照れるな、照れるな」

今度こそドフラミンゴはなまえの肩に腕をまわして、上機嫌に歩き出す。こうなればもう彼のペースというやつで、なまえは安らかな休日を諦めるしかなかった。


(120421)

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -