※死ネタを含みます

血を滲むような努力を重ねてきた。憧れのヴァリアーへ入隊するために、それこそ身を粉にするほど。もともと勉学も武術も何ら才能のないわたしがなぜこうして躍起になったのか、それはスクアーロさんに言わせればボスの怒りに惚れたから。実際一目ぼれに等しい。
親の家業のおかげでパーティーの末席にいたわたしは彼に会った瞬間電撃が走った。わたしはその時決意したのだ、この人のために生きて死のうと。そのためには厳しいヴァリアー入隊試験を受けねばならなかった。まずもって入隊資格最低条件が七カ国の言語を操れることに辟易した。今までの学校生活を怠けていた報いかもしれない。わたしは必至で言語を習得した。
次に覚えるべきは殺しの業。こちらはもっと才能が無かった。まずもって銃を握る手が震えて話にならない。親に叱咤されてなんとか見れるようになったときに、ようやくわたしは部下に加えていただけた。嬉しかった。今までの努力が報われて、ザンザスさまのお傍で働けることが何より嬉しかった。
その浮ついた気持ちがおそらくこの惨劇を招いたのだろう。気づけば部下も敵も血みどろまみれになって、白い絨毯を赤く染めていた。もちろんわたしもかろうじて息をしているものの致命傷を負い立ちあがれない始末。

(血を流しすぎた…)

おかげで視界もかすんで、頭もくらくらして吐き気がした。これは死ぬな、いや、このような失態を犯した時点でもはやわたしはヴァリアーに在籍することは出来ないのだけど。ふふ、これはもう鬼籍に入りかけているわ。急に可笑しくなった。何もかもばかばかしくなった。わたしの努力は何だったのか、わたしのしてきたことはいったい…?
薄暗い部屋に一筋の光が差した。あまりにも眩しくて誰か分からない。俯くと大きな影がかろうじて男だといことくらいしか情報をくれなかった。

「カスが、」

それは吐き捨てるように低い声、まごうことなく敬愛して止まないザンザスさまだ。死に際の幻聴だろうか?なぜあの方がここに…?このような無様な姿、今更だけれど見せられない。懸命に体中から力をかき集めて起き上がろうとする。
それをザンザスさまが手で制した。嗚呼…ザンザスさまのお手がわたしに触れている!それだけのことに歓喜で震えた。矢張りこの方のために命など惜しくはないと思えた。ただ残念なことは、あなたさまの役に立てなかったこと。心残りで仕方がありません。

「どうぞ、粛清を」

わたしはただ静かに頭を垂れた。ザンザスさまに殺していただけるなら本望だ。カチャリ、銃の無機質な音がやけに響いたのが耳にこびりついて離れない。
次の瞬間に暗転、そして意識は完全に消えた。

「お前はカスだ、もっと他に俺の役に立つ方法ならいくらでもあっただろうが」

ザンザスさまがわたしの死体にそう言い放ってくださったのをわたしは最後まで知ることは出来ませんでした。


(100327) title.hazy




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -