「ボス!」

慌てて執務室に入るといきなりワイングラスが飛んできた。どうやら虫の居所が悪かったらしい。しかしわたしはそれどころではなかった。日本へ発つ日が間近に迫っているという噂を耳にして真実かどうかを確かめに来たのだ。

「日本へ発つのはいつですか!?」
「……うるせぇ」
「いや、あの、いつなんでしょうか」
「……」

人が尋ねているというのにこの仕打ち。ボスは思いっきり眉を顰めてこちらを睨む。なぜこう睨まれなくてはいけないのだろう、じんわりとその恐怖に圧倒され手が冷や汗をかく。それでも今日は引くことが出来ない。

「ついてくる気か」
「はい」

ボスの問いに迷いもなく答えると、ますます眉間に皺を寄せてそのまま椅子を反転させ窓の外を眺める。その後ろ姿からも威圧感がひしひしと感じられ、これは相当機嫌が悪いというのが分かった。最近のボスは帰還してからどうも焦っているような、苛立ちが見受けられた。それでも我らがボスのために、わたしは懸命に努力してきたつもりだ。彼のボンゴレ十代目という輝かしい栄光を実現させる、それだけを目標に奔走してきた。それなのに大事な日本での次期後継者に関わるバトルに参加させていただけなかったら、わたしは自害してしまいたい。

「……てめぇがまずは任務を終わらせる、話はそれからだ」
「しかし、次の任務は長期のもので」
「自分の責務を果たせないカスなんぞ俺には必要ねぇ。待っていてやる、さっさと終わらせて来い」
「……!はい!!」

ついにその言葉が聞けてホッと胸を撫で下ろした。わたしは安心してボスの部屋を出ていくとさっそく空港へと向かい、任務を終わらせるべく旅立った。

忘れていたのだ、彼は嘘つきだということを。


(090723)

ヒロインを危険な目に遭わせないために、わざと任務に行かせてその間日本へ行っちゃうザンザスを目指してみた。



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テーマ「人外ファンタジー」
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