「てめえらは、この間じじいのパーティーで襲撃してきた仲間だな?」
「おや、よくご存じで。さすがボンゴレお抱えの独立暗殺部隊…ヴァリアーの名は伊達じゃないということですね。そうなれば話は早い、こちらの要求はただひとつ。ボスであるあなたの命、です」
「その女を対価に?甘く見られたものだな」
「果たしてそうですかね」

首謀者と思われる男は、背後にいた部下に合図をした。

「いたっ…!」

途端に片方の男がなまえを抑えていた手を離し、その首を絞める。明らかに殺意を込めたものであった。苦しみと恐怖になまえの顔が歪む。
その時であった。なまえの耳にヒュッと掠れたような音と、遅れて爆発音と硝煙の臭い。

「ひっ……」

自分の首を絞めていた男の顔からどくどくと滴る血に、なまえは後ずさる。そのまま部下の男は絨毯に体を沈めた。映画で見ることと実際に自分の目で見ることはやはり違う。どうしても恐怖に体が強張る。逃げ出したい気持ちであったが、それでもまだもう一人男がなまえの拘束を離さなかった。
なまえはちらりとザンザスを盗み見る。一瞬目があったように感じたが、すぐにフイとそらされた。

「ザンザス、あなたは自分の立場が分かっているのですか?次にその銃口を向けたら即座に後ろのお嬢さんを殺します。おとなしく死んでください」

首謀者の男の声はわずかに上擦っていた。先ほどのザンザスの行動に体が反応できていなかったのが分かる。やはり一筋縄ではいかない強さを彼は持っていた。小娘一人を人質に取っただけでは甘かったかもしれない、といった認識を持つが、後悔先に立たず。彼も引くに引けない状態であった。
なまえを抑えている男は、首謀者の合図により、なまえの頭に銃口を突き立てた。万事休す、ますます身動きは取りにくくなる。
なまえはもう一度この横の男に何かしらのアクションを、もしくは首謀者を即座に倒すことにザンザスの行動を期待した。ところが、ザンザスは首謀者の言う通り、大人しく銃を降ろした。

(な、なんで…!?)

なまえの知るザンザスは、人の指図にイエスと応じる男でっはなかったはずだ。首謀者の男も意外に思ったのだろう、何か企んでいるのではないかと警戒心を強める。

「どうした、俺を撃たないのか?」

攻撃をしないどころか、男を挑発する。なまえは冷や冷やする思いでその様子を見守るばかりしかなかった。案の定、こけにされてはたまらないと首謀者の男は銃を構える。緊張感が部屋全体を包んだ。

(なんでザンザスは攻撃をしないの?このままじゃ撃たれちゃうじゃない…!)

なまえはもはや居ても立っても居られなかった。自分はただザンザスにもう一度会いたい、それだけであったのに。

「どうしてこうなるのよ!」
「いっ……!?」

なまえを拘束していた背後の男の足を、思いっきり踏みつけてやる。拘束がわずかに緩んだところで、なまえは向き直り、鳩尾に肘鉄を食らわせてやった。
それと同時に、ドアからはスクアーロ、それから幹部と思われる男たちが突入してくる。既に形勢は逆転しており、ザンザスは首謀者の男を憤怒の炎で焼き切っていた。何もなまえが行動を起こさずとも、ザンザスは思った通り彼らを倒す算段をつけていたのだ。

「それで?テメーは、なんで戻ってきた」

ザンザスは不審げになまえを見下ろす。その顔はいつもと違って、威嚇するような、鋭い表情であった。まるでなまえにビビれ、と言わんばかりに。そうは問屋が卸さない、なまえだって一大決心をして引き返してきたのだ。噛みつくように、じいっとザンザスを見上げる。

「私、帰らないから」
「……あ?」
「ザンザスの押しかけ女房になる!」
「……あぁ!?」

しばらく意味が呑み込めなかったのか、ザンザスは沈黙した。それも、なまえが自信たっぷりに言うものだから、本気であることを察したのか、急に笑い出す。

「ぶはーはっは!テメーは本当に馬鹿女だな!」
「なっ」
「おいカス鮫、ワインが零れちまった、新しいのを出せ」
「う"ぉぉおい!なんで俺が」
「いや、待て。こいつには別のものを用意しろ」
「ザンザス?」

ついて来い、と言わんばかりにザンザスは部屋を後にする。

「フフ、ボスったら素直じゃないわね〜」
「あ……ルッスーリアさん。あれって」
「ここにいていいってことでしょ!よかったわね」
「……!はい!!」

なまえは満面の笑みで、ザンザスを追いかけた。
ルッスーリアはぶつくさ文句を言っているスクアーロにご愁傷様と声をかける。

「ねえ?ボスは彼女に何を用意しろ、って言ったのよ」


セブンスヘブン


(131122) end.
嬉しいときに使われる。

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