うららかな昼下がり、窓際の席で心地よい眠気に襲われた綱吉は、机に突っ伏していた。それをくすくすと笑いながらなまえは後ろから小突いてやる。途端にものすごい勢いで綱吉は飛び起きた。

「な、なになに!?」
「つっく〜ん、もう六限終わってるよ」
「えっ うそ」

きょとんとした様子であたりを見回すと、クラスメートたちは帰宅の準備をしていたり、掃除のために椅子を机に上げていたりしている。

「馴れ馴れしく十代目を呼ぶんじゃねえ!どうせそろそろ風紀委員長のお出ましだろーが」
「恭弥……ね」

不機嫌オーラを出しながら獄寺がなまえにガンを飛ばした。もっともそれに動じるなまえではなかったのだが、雲雀恭弥の話題が上がったことにダメージを受けている。綱吉、獄寺共に、なまえの様子に首をかしげた。
いつもうざいくらいに雲雀となまえは仲が良い。群れることを嫌う雲雀が側に誰かを置くというだけでも一大事なのに、それがこの平々凡々の女子、なまえというから当初は綱吉、守護者の間でも衝撃が走った。いったい何が雲雀の興味をそそったのか未だに謎だが、以来教室まで雲雀が迎えに来る光景を二人はよく見てきた。

「何かあったの?」

一応雲雀は、綱吉の不本意ながら同じボンゴレファミリーであり、雲の守護者だ。何かあったのだろうかと心配げになまえへ尋ねた。

「…うん、この間のデートなんだけど」
「デデデート!?」
「そう。遊園地に行ったの」
「遊園地!?あの雲雀さんが!?!?」

ポンポンとなまえの口から飛び出てくる単語にいちいち驚いてしまう。悲しい哉、綱吉は突っ込まずにはいられなかった。まずもって雲雀がデートをし、かつ遊園地に行くことが想像できない。

「でね、わたしがあれほど嫌だって言ったのにジェットコースターに乗るわ、お化け屋敷に連れて行くわ、ちょっと喧嘩しちゃって」
「いや…もう雲雀さんにそこまでさせているだけで俺、なまえちゃんを尊敬するよ」
「十代目、もしかしてこいつUMAなんじゃ…!!」

二人の動揺をよそになまえは更に語る。

「だけど今日は恭弥の誕生日でしょう?仲直りしたいな〜とは思ってケーキ焼いてきたんだけど、渡す勇気がでなくって。あ、よかった綱吉くんたちで食べてくれないかな」
「えっ!?そ、それは嬉しいけどでも……」
「まず間違いなく雲雀の野郎が知ったら怒るッスよ…」
「僕が何を怒るって?」
「「うわああああ!!!!」」

噂をすれば影。藪から棒に、背後から雲雀の声がする。慌てて二人は退いた。しばし気まずい沈黙が降りる。

「それで?僕に何を隠しているわけ」
「…あの、恭弥、こないだはごめんね……これ…」
「? なに」
「……っ、お誕生日おめでとう!」

半ば強引になまえはケーキの入った箱を雲雀に着き渡して、パタパタと廊下に飛び出して行った。それを三人は呆然として見送る。先に、我に帰ったのは獄寺だった。

「十代目、今がチャンスです!帰りましょう」
「そ、そうだね、獄寺君」

慌てて鞄を背負う二人だが、雲雀のトンファーがそうはさせじと立ちはだかった。心なしか凍るような視線を向けられている。

「ね。君たち、僕のなまえと何を話していたんだい?」
「(ギャーーー!!)」

綱吉は悲鳴ならぬ声をあげて、己の悲運を嘆いた。
後日、雲雀となまえが仲睦まじげに昼食を取っているところを見て、触らぬ神に祟りなしと二人はそっと離れることを学習したのである。


(120505)

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