ズイに住む顔馴染みの画家さんに手配してもらって、ようやくウシオ達を手持ちに戻したのが、数日前。シンオウに来てからぽっかりと空いていた心の溝は、しかし埋まることはなく、どこか虚しい気持ちが残っていた。理由は自分で理解していた。ぶつける場所のないモヤモヤは、まだ心に残っている。このズイタウンは、長閑で時間がゆったりと進むような感覚のせいか、考え事をするには良い環境だった。そんな理由から、バトルをする訳でもなく、絵を描く訳でもなく、ただ毎日ぼけっと散歩をしながら、数日をここで過ごしたのだ。

一人で何か考え始めると、いつもならすぐに飽きて放り出すのに、今回は違っていた。自分にとって、苦しくて、昔に戻ったような環境にいたせいか、マイナス思考になりがちで、悪い連鎖に嵌まってしまった感覚だ。もはや自分で抜け出すことは難しくて、誰かに聞いてもらって、一緒に整理したかった。ごちゃごちゃと頭の中で回っているたくさんの悩み事は、全てを順に追って口に出していかないと、身体から出ていってくれない気がした。

自分が遠慮をせずに悩み事を打ち明けられる相手。静かに聞いて、たまに相槌をうって、一緒に話の整理をしてくれる相手。そんな存在の人が、この大陸にはいなかった。そんなときに、ふと頭に浮かんだのは、今まで毎日のように乗っていたカムパネルラだった。シンオウに来てから一回も乗れていないが、あそこの人になら話せる気がする。急にカムパネルラが恋しくなったときにふわふわの金髪頭を見付けたので、もしかして会いたすぎて幻覚を見たのかと思ったくらいだ。しかしその後ろには確かに白いもこもこしたポケモン、エルフーンがちょこちょことついてまわっていて、俺は思わず両手をこれでもかと大きく振って、その名前を呼んでいた。

「アサキさーん!」

振り向いたアサキさんの顔を見たら、堪えきれなくなってしまって、半ばたいあたりのようになりながら飛び付いた。草原みたいな匂いのアサキさんは、ぐらりと傾いたかと思うと、そのままエルフーンのスピカが出したコットンガードに倒れ込んだ。苦笑いするアサキさんに、ごめんなさいよりも先に、逢いたかった、という言葉が口から出た。口にすると余計にジーンとなってしまって、小さな子供のようにアサキさんにぎゅうと抱き着けば、ゆるゆると頭を撫でてくれて、安心感を得た。

しかし、続くアサキさんの元気だった、って言葉に対して、一瞬何も言えなくて。すぐに繕う笑顔を作ろうとしたけど、止めた。アサキさんにはばれてそうだし。思った通りアサキさんはちょっと顔を曇らせてから、また笑って、このあと時間ある?と尋ねてきた。時間ならいくらでもある。用事があると言うアサキさんに待つと伝えて、一旦別れた。

モヤモヤはなくなってはいないけど、随分気が楽になった。今ならと思って、いつも持ち歩いているスケッチブックと鉛筆を取り出し、ふらふらと育て屋の放牧地を眺める。最近はあまり絵が描けなかったけど、今なら描ける気がして。近寄ってきたミミロルに笑いかけて、動くなよーと声をかけつつ鉛筆を走らせる。描くうちに、頭の中では色が着きはじめたが、その色があまりにも暗くて、一瞬鉛筆を止めた。





書きたいこといっぱいあったけど出発の朝になってしまったので帰ってきてからまた書きます><
あきらかに ながい\(^o^)/




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