その日はよく晴れていた。

クルナスがマルグリートの船に足を向けたのは、海賊団を二つに分けると宣告された翌日であった。迷っていたわけではなかった。なんとなく、話を聞いた時から彼の中で、こっちに行こうという思いはあったのだ。でもはっきりとした理由が思い浮かばず、言いに来るのを躊躇ったのだ。マルグリートはそういった曖昧さを好まないだろう、と。

さて、時間がなくなり置いていかれては困ると、とりあえず足を向けてはみたが、結局、明確な理由は見つからない。アルマースお嬢さんもマリーお嬢さんも、どっちも次期船長には充分すぎると彼は思っていた。信頼しかり、実力しかり。だが、どちらか選ばなければならない。なら、マリーお嬢さんかなあ?何故?なんとなく?それで、いいのか?

「まあ、なるようになるかな」

曖昧に笑って、自分に言い聞かせるようにつぶやいた後、彼は新たな船長の待つ部屋への扉を開けた。





「こんにちは、マリーお嬢さん」

クルナスが声をかけると、マルグリートは笑った。いつもの強気な笑顔だ。その顔をみると、理由を言う必要なんてないかな、とも思えたが、同時に、どうして彼女につこうと思ったのか気付いた。

「ちょっと、遅くなっちゃったかな。考えこんじゃって」
「アタシにつくか、アルマースにつくか?」
「ううん、どうしてすぐにマリーお嬢さんにつこうと思ったか」

そう言うと、マルグリートは、少し興味を持ったような表情を見せた。

「でも、今わかったよ。俺はね、マリーお嬢さんが戦ってる姿が好きなんだ。綺麗な青い髪をなびかせて、自由に楽しそうに、戦ってる姿が。だから、俺は、そんなマリーお嬢さんをまだ側でみてたいし、守りたいと思ったんだ」

クルナスは照れたように笑いながらそう言ってから、真剣な顔をして、視線をマルグリートと合わせた。

「これからはあなたのことを船長と呼ぶよ。そして俺の命に代えても守るから。信じて」
「絶対?」

いつも弱気なクルナスを試すように。マルグリートは静かな声で聞いた。

「絶対、だ」

すぐに、力強く、返ってきた答えに、マルグリートは表情を柔らかくする。つられてクルナスもふにゃりと表情を崩した。

「じゃあ…これからもよろしく、クルナス」
「うん、よろしく船長さん」

晴れて静かな海は、船出日和。スッキリとした気持ちで部屋を出たクルナスは、新たな旅を共にする仲間の待つ甲板に向かうのだった。


Bon Voyage




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