「つまり、知り合いがある場所に閉じ込められてるから、その人を助けられるように、その場所に侵入する方法を一緒に探してくれって事?その人を僕たちが助けるんじゃなくて?」
「帝人。それさっき、幽が同じ事聞いてたぞ。あ、データが見つかりました。右上のモニターに出します」

 シシオ君と幽君が張間さんの依頼を聞いている同時刻。とある場所では、四人の男子生徒が幾つかのモニターを前に話をしていた。

「門田先輩、遊馬崎先輩、こいつが彼女が閉じ込められてると言ってる人物です」
「紀田君、僕は?」
「矢霧誠二、首無学園高等部一年か。ん?こいつ今朝、焼却炉で見たぞ」
「まじっすか門田さん!まさか彼はレプリカなんすか!いや、閉じ込められてる方がレプリカだから…彼はオリジナルセージなんすね!閉じ込められる方の彼は前髪が下りていて」
「遊馬崎、少し黙れ。“上の話”が聞こえない」

 会話になっているのかなっていないのか、イマイチ不明な四人のやりとり。彼らの前にあるモニターには、《首無金融》の部室、給湯室、部室周辺、そして《矢霧誠二》という名の少年の個人情報が映し出されていた。

「ふんふん、毎日ちゃんと出席してるね?双子の兄弟がいるって情報もないし?門田先輩が見たっていうのは、本人と思っていいのかな?」

 やたらと疑問調を連発するのは、大企業の社長室にでもありそうな黒い革張りの椅子に座る、黒髪ベリーショートの少年。彼は目の前にある、これまた高級そうな机に肘を突いてモニターを見ている。
 そのすぐ横には、茶髪にピアスをした少年が立っていた。

「となると、彼女の狂言なんでしょうか。門田先輩」
「ねえ、紀田君。僕は?」

 茶髪の少年に声を掛けられたのは、少し離れた場所にあるまたまた座り心地のよさそうな大きなソファーに腰掛ける、オールバックの少年。向かいのソファーに座っているのは糸目の少年だ。

「外出しているから自由、とは限らない」
「そうっすね。沙都子ちゃんみたいな事情を秘めてるのかもしれないっす」

 糸目の少年の発言に全員沈黙。

「誰だサトコって?」
「誰っすかサトコって?」
「雛見沢の沙都子ちゃんですわよね?」

 茶髪の少年、オールバックの少年、糸目の少年がベリーショートの少年の方をバッ!と見た。

「すごいっす!今、最後に喋ったの頭取さんっすよね?!」
「オーホッホッホ!そうですわよ、遊馬崎さん」
「うわぁ、さすが頭取さんっす!声そくっりっすよ!その声で“にいに”って言ってほしいっす!」
「にい「帝人、いい加減しろ」
「遊馬崎お前、四時からアニメの再放送あるんじゃなかったか?」

 ベリーショートの少年は茶髪の少年に睨まれ、糸目の少年はよく分からない事を叫びながら部屋から出った。
 またしばらく沈黙の後、ベリーショートの少年が救いを求めるような顔で給湯室のモニターを指差した。

「幽君がこっちに電話掛けるみたいだよ?どうやら話が終わったみたいだね?」
「帝人、声が直ってない」
「…………。えー、あーあー、あめんぼふれふれあいうえおー、ゴホンゴホン。うん、これでいいかな?」

 その時、タイミングを見計らったかのように机の上の電話が鳴り、茶髪の少年がすかさず取った。

「はい。《地下本店》」
「うん。そうなる気がしてたよ?」
『モニター、見てた?』
「ああ、まあ、大体は…」
「何で僕を見るのかな?どっちかっていうと、主に遊馬崎せんぱ――すいません。ごめんなさい」

 ベリーショートの少年、睨まれて咎められて無視された末に何故か椅子に正座になりました。

『今から張間さんと一緒に矢霧君がいる場所に行く事になったから、誰か《支店》に上げてもらえる?』
「って事は、静雄先輩も一緒に行くのか?」
『当たり前だよ。今日の当番は俺と兄さんの二人だから』
「お前わざと言ってるだろ」
『そういう事だから』

 よろしく。と締め括ると、幽君は一方的に電話を切った。

「あはは。そういう事って、どっちに掛けて言ったんだろうね?この後の行動について?静雄先輩について?」
「両方だろ。それより頭取、さっきから気になってる事があるんだが」
「偶然ですね、門田先輩?僕もさっきから気になってる事があるんですよ?」

 そして二人はモニターの左下に目を向け、茶髪の少年は無言でノートパソコンを操作し、その映像だけをフルスクリーンにした。映し出されているのは《首無金融》の部室の外――例のカーテンの向こう側であった。

「あの黒髪の人、誰かな?」


 つづく。



――――――――――
長い上にヒロイン空気でヒーロー不在という暴挙。
帝人の口調や声マネは元キャラの設定そのまま使用してます。正臣の態度も同じく。それにしてもこの帝人、ノリノリである。四人組の学年云々はまた追い追い。


2010.8.10

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