下剋上されました。の続き。単品でも読めます。

※臨也さんが変態
※純粋に野球が好きな方は注意して下さい




「話があるんだ」

 夏の盛りの八月上旬。気候はムシムシ木からはミンミン。そんな素敵でビューティフルなこの日に、俺はかつての同級生に一世一代の思いのたけを打ち明けようとしている。

「なんだ?」

 顔面が猛烈にアツイのは燦然と輝く太陽のせいだけではないだろう。握った手が汗ばんでいるのだって、きっと気温のせいじゃない。
 心臓の音がどんどん大きくなっていく。そのうち身体ごと破裂するんじゃないかと本気で考えた。
 だけど、例え本当に破裂するとしても、この胸の内だけは伝えよう。

「あ、あのさ…」
「ん?」
「一生のお願いだから俺と野球してください!!」
「断る」
「断るッ!」
「はあッ!?」
「お願いマジ俺と野球して!ドタチンッ!」

 俺は深々と下げていた頭をガバッと上げると、目の前のかつての同級生――ドタチンに縋りついた。

「ちょっ、離れろ暑苦しい!」
「イヤだ。ドタチンが野球してくれるって言うまで離れない!」
「なんで俺がお前と野球しなくちゃいけないんだ!」
「するって言ったら教えてあげる」
「なら知らんでいい!そして断固拒否する!」
「断固拒否するッ!」

 ふははは。そんな俺の首根っこを掴んで引っ張っても無駄だよ。そんな事じゃ諦めないぞ。

「どうせまたロクでもない事考えてるんだろっ」
「違うよ。凄く真剣で深刻で深層心理さえ清廉潔白な理由だよ」
「お前は岸谷か!」
「だったら俺を新羅だと思って、新羅に野球やってくれって頼まれたと思って考えて!」
「全く意味が分かんねえし、どっちみち断る」
「そんなんじゃ友達なくすぞドタチン!」
「お前にだけは言われたくねえよ!」
「ぐぎゃっ!!」

 脳天に衝撃。目の前に一瞬お星さま。灼熱の地面と文字通り熱いキッスをしてしまったが、意地でドタチンの足首を掴んだ。

「た…頼む。頼むから」

 俺が地面に這いつくばったまま必死に懇願すれば、人のいいドタチンは渋面になりながらも、

「何で俺と野球する必要がある?」

 と聞いてくれた。ああ、やっぱり持つべきものは友達だよね。扱いやすい。

「正直に告白すると、本当はシズちゃんとやりたいんだ。あ、野球をね。もちろんセッ「それで俺がどうしてでてくる」

 俺まだ話し終わってないんだけど。なにその低い声と怖い顔と変なものを見る目は。まあ、いいや。今はこいつの説得が最優先事項だ。それからいい加減立とうかな。

「俺、今シズちゃんと喧嘩中なんだ。正確に言えば向こうが一方的に怒ってるだけなんだけど」

 そうあれは忘れもしない二日前。波江の陰謀のせいで俺はシズちゃんに殴られた挙げ句、もう二度と電話してくるなと言われてしまった。
 最初は暫く待っていれば時間が解決してくれると思ってた。でも一日経っても一向にシズちゃんから連絡が来ないから、次の日朝からどうやったら仲直りできるかを思索した。そんな時、波江が偶然テレビで高校野球を見ていた。
 そして俺は思いついた。

『みんなで仲良く野球をすると見せ掛けて、真っ白いユニフォームを着てエロ爽やかにプレイをするシズちゃんを撮影しよう作戦』

 を。

「だけど、俺がひとりでシズちゃんを誘っても断られるのは確実だから、まずはドタチンに仲間になってもらって、ドタチンにシズちゃんを誘ってもらおうかなって」
「お前一度死んでこい」
「ひどっ!」
「酷いのはお前の性格と頭ん中だ。なんで長ったらしい作戦名の中に仲直りの《な》の字も入ってないんだよ、完全な私欲じゃねえか!」
「入ってるよ。みんなの《な》は仲直りの《な》だ!」

 あれ。俺、今いいこと言ったんじゃない?空に向かって叫んじゃったりして何か青春ドラマの教師っぽくない?

「おい、エロ爽やかって何だ?」
「エロくて爽やかの略だよ。エロティックかつ爽やかでも可」
「で、何がどうエロ爽やかなんだぁ?」
「まずはシズちゃんのポジションがキャッチャーであることを言っておこう。
 ほらキャッチャーってさ、大きく股開いて座るじゃない。しかも顔とか上半身とか膝とかは防具付けてるのに、股だけは無防備で。さらにピッチャーにサイン出す時はその股から指を一本出したり二本出したりするんだよ。あれなんて羞恥プレイ?って思ったんだよ。絶対シズちゃんにやらせたいと思ったんだよ。
 他にもごっつい防具してるから、きっとユニフォームの中は汗まみれなんだろうな脱がせたいな。とか、マスクの中に盗聴器仕込んでおいて、荒く熱っぽい吐息とか、早いボールを受けた時に漏れた声を堪能したいな。とか。
 っていうか、もう思い切って後ろにバイブ突っ込んで試合に出させて、試合中ずっと微妙な刺激与え続けてそのうち我慢できなくなってオナってイッちゃうように仕向けたい。ああでも逆に、シズちゃんのちんこ縛っておいてイケないようしちゃうのもいいかもしれない」

 ねえ、どっちがいいかな?とドタチンの方を振り返れば、うん、いなかった。しかもなんで…

「なるほどよーく分かった。十二分によく分かった。取り敢えず今すぐ死ね」
「なんでシズちゃんがいるのかなぁ?」

 脳天に衝撃。目の前は一瞬で真っ暗。次に目が覚めたのは自分の事務所。机には「残念だったわね、仲直りできなくて」と書かれたメモが置いてあった。

「高校野球なんか見てたのはこの為だったのか…」





退場させられました。

(試合する前から…)



――――――――――
なんかもう色々とすみません。申し訳ありません。単に臨也さんの最後の熱弁を書きたかっただけ。爽やかはログアウトしました。


2010.7.14

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