※ほぼヤッてるだけ



 暑い。熱い。あつい…
 アツスギル。

「っは、あ…ぁあっ!んっ、はぁっ、ンっ、あっん!」

 煙草の匂いが染み付いた部屋に自分の声が溶けていく。だらだらと、どろどろと、止まることを知らずに溶け続ける。
 背中にはごわごわした畳の感触。腹部にはぬるぬるした粘液の感触。
 口から出るや否や熱気と化す荒々しい呼吸も、ぐちゅぐちゅぱんぱんといった卑猥な音も、肉体の内外から絶え間なく押し寄せる快楽も、すべてすべて溶けていく。この狭い、俺の部屋の中で。

「どうしたのっ、シズちゃん?今日は一段と…っ気持ち良さそうな声、出してさッ」

 ぐらぐらと揺れる視界には汗に濡れた端正な顔と、同じく汗だくになった痩せた上半身。陶器のように滑らかで白い肌は今は桃色に染まり、頬に関しては最早紅色と言っていい程上気していた。湿り気を帯びた黒髪は何時に増して艶やかに光り、それが細い首や小さな顔にペッタリと張りつき、壮絶な色気を醸し出している。
 同じ男でありながら、それも自分が抱かれている身でありながらも、思わず生唾を飲んでしまう。
 そしてそんな男に抱かれているという現状に、俺はどうしようもなく興奮し溺れていた。

「、もっ…と…ぁっ、…っあん…いざや、あっ!もっと、欲しい…!」
「ずいぶんとっ、はっ…積極的…、っじゃない!」
「んっ、だっ、て…はぁっ!気持ち…いいっ」

 言葉にした瞬間、呼応するかのように肉体の奥からより深い快楽が押し寄せてくる。相手の肩を強く掴めば、汗で指先が滑り、そのずるっとした感触にさえ身体が震えた。
 自分も相手も全身汗塗れだった。なにせ真夏の日中にクーラーも付けず窓も開けず事に及んでいるのだから当然だ。
 暑いから二人とも衣服なんてものはとうの昔に全部脱ぎ捨てた。
 だから触れ合うのは常に互いの湿った肌と肌。熱いのはいったいどちらの肌か。キスの度に舌が感じるしょっぱさはどちらの汗か。
 皮膚に受ける熱さが相手のものならば、もっとその熱を受けもっとその熱に包まれたい。もし自分のものならば、もっと熱が高まるようもっと相手を求めたい。
 舌に流れる刺激が相手のものならば、もっとその刺激を味わいたい。もし自分のものならば、もっとその刺激を味あわせてやりたい。
 あつさと快感で焦げてゆく思考の片隅で、ぼんやりとそんな事を考えながら、俺は臨也を強く求めた。

「気持ちっ、いい…いざやぁっ」
「俺も…気持ち良い、よっ。んっ、シズちゃんの中…はっ、すごい…ッ熱い」

 幾度目だというのに少しも衰えない臨也の熱く膨れ上がった雄が、絶えず前立腺を突き上げる。臨也が腰を動かす度に、既に何度も精液を吐き出された後孔からじゅぼじゅぼと音が洩れ、溢れた精液が汗と混ざり腰を伝った。
 その、ぬるりともたらりともつかない微妙な流れ方がいじらしく思わず腰をくねらせれば、臨也のモノを更に奥へと招き入れる形になってしまった。

「ああッ!!」
「ぅっ、ン、シズちゃんっ…締めすぎ…!」
「んなことっ…言っ、われ…たって、はっ!ぃ、っく…イク…!」

 今ので一気に絶頂へ近づいた俺は、ずるずると指を滑らせながらも必死に臨也に掴まる。

「シズちゃんっ、ちょっと…我慢…んっ、して」
「やっ、ぁっ、ム…リっ!」
「あと少し、だからっ!」
「だめっ、んっ…ぐっ、ふ、ぅ…あ…い、ざや…ッ、ぁああ!」

 下腹部の前と後ろで二つのモノが激しく脈打ち、それから身体の外と内にどくどくと熱い液体を浴びた。
 異常なまでの倦怠感にしばし動けないでいると、汗でべとべとになった痩身が倒れこんできた。汚れるぞとか何とか言おうとしたけど、今更言う台詞でもないと思い、黙って倒れてきた身体を受け止めた。
 何もかもがぐちゃぐちゃだった。俺の身体も臨也の身体も、色褪せた畳も蒸し蒸しした空気も。
 このまま一緒に暑さで溶けてしまいたい。
 一瞬そう思った。だが、すぐにその考えは破棄した。
 このまま一緒に熱さを重ねていたい。
 代わりにそう思った。
 互いが互いと分かるように。互いに互いを求められるよう、別の別のままで、ひとつになりたい。
 だけどさすがに、

「あつすぎるね」
「……そうだな」





これも夏の風物詩
(そうだ。ありがとね、シズちゃん)
(は?)
(さっき我慢してくれたでしょ)
(……そう…言われたからな)
(だからやっと一緒にイけたよ)
(ばっ!てめっ、何恥ずかしい事言ってんだよ!)
(ちょっと!急に動かないでっ、わっ!)



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夏の汗だくプレイは鉄板ですよね。


2010.7.01

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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