「おはようございます」
「ん?ああ、おはよう」
「どうしたんすか店長?何かあったんすか?」

 本業を終えそのまま副業で始めたコンビニのバイトへとやってくると、事務所で店長が困り顔で唸っていた。
 話を聞けば、かれこれ三時間近く雑誌を立ち読みをしている男がいるのだという。しかも雑誌の種類がいわゆるエロ本と呼ばれるもので、気味悪さと末恐ろしさから出来れば早急にお帰りいただきたいらしい。

「俺、声掛けてみましょうか?」
「いやでも、ぶっ飛んでるやつだったら危ないよ」
「大丈夫っす。慣れてるんで」
「そう?じゃあ、お願いできる?」

 こうして俺は手早く制服に着替えると本棚へと向かった。
 が、問題の男を見つけるなり足が止まった。

「あっ、シズちゃん!やっと来た。俺ずっと待ってたんだよ。俺の情報だと今日のこっちの出勤は一時間前のはずだけど、どうしたの?遅刻?」
「……んで……ゃ…る」
「え、なに?んで、やる?ヤッてたの?」
「なんでてめえがここにいやがるんだっつったんだよクソノミ蟲がぁぁぁああ!!」
「ちょーっと、ちょっと。俺はお客さんだよ。そんな態度とっていいの?」
「何が客だ、エロ本立ち読みしてただけだろ!」
「じゃあ買えば客として認めてくれるわけ?はい、じゃあこれください」
「そういう問題じゃ……って、なに開いてんだよ!!」
「どうやって渡そうが客の勝手でしょ」
「自分でレジ持ってけ!」

 最悪だ。最悪だ。最悪だ。最悪だ。何が待ってただ。何が客だ。何で人のバイト先でエロ本三時間立ち読みしてんだよ。余所の店行けよ。もっと違う種類の店行けよ。

「もしもーし。シズちゃーん。ぼーっとしてるともっと過激なページにしちゃうよお。ほらほら」
「今すぐ死ねっ!!」
「相変わらず語彙が少ないなあ。脳ミソ小学生の頃から発達してないんじゃない?ボタン掛け違えてるし」
「えっ」

 本当だ。掛け違えてる。急いで着替えたから間違えたのか。ってこれだって、こいつのせいじゃねぇか。

「至ってノーマルなエロ本で動揺してるし」
「て、てめぇが開くからだろっ!」
「はいはい分かった分かった。閉じればいいんでしょ。はい、これで会計してもらえるよね店員さん?」

 うぜぇ。でも我慢だ。ここで暴れたら副業を始めた意味がねぇ。少しでも社長に金を返さねぇと。さっさと会計を済まして追い出す。それしかない。

「金払ったら一秒以内に」
「あ、それからさ。トイレットペーパー切れてたんだけど補充してくんない?」
「…………」

 さっさと補充してさっさと会計をして追い出す。耐えろ自分。急げ自分。

「――って、なんでトイレまで付いてきてんだ?」
「そりゃトイレに用事があるからだよ。そもそも用事がなきゃ補充なんて頼まない」

 まあ、そうだよな。って、何で入り口の鍵閉めてんだこいつ。俺が出てってから閉めろよ二度手間だろ。

「何?ああ、鍵閉めたの気になった?別に俺は開いててもいいんだけど、シズちゃんが困るかと思って」
「……それ逆じゃねぇのか」
「逆じゃないよ」
「は?」
「すぐに意味が分かるよ」




――――――――――

自分変態臨也しか書けないかもしれない。
この後何が起こったのかはご想像にお任せします。


拍手ありがとうございました!




2010.6.25
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