※臨静は同棲ほやほや
※臨也さんが変態






 洗濯が嫌いだ。
 正確に言えば、洗濯物を畳む工程が嫌いだ。
 家事をするのが嫌なのではない。洗濯なんかはガキの頃からよく手伝っていたから、することに抵抗もめんどくささも感じない。
 むしろ昔は好きだった。
 温かい洗濯物を抱えた時のもふもふとした感触が心地よく、零れるのも気にせず腕いっぱいに抱えた。
 床に置いた後も山になった洗濯物の中に顔を埋めてはよく幽に注意された。
そうつまり、いい思い出に溢れていたのだ。俺と洗濯との歴史は。

なのに、

「いっ、ざ…や、はっ…やめろっ、んっ! おっれが今、何して…のか、分かっんねぇ、のかっ!」
「エッチ」
「こ、ろすっ!」
「えーハズレ? じゃあ、俺にペニス扱かれてあんあんいってる」
「ぶっ殺すっ!!」

 なんでだ。なんでいつもこうなる。なんで毎度毎度人が洗濯物を畳んでいる時に邪魔してくるんだこいつは!




 洗濯が大好きだ。
 正確に言えば、洗濯物を畳んでいる工程を見るのが好きだ。
 家事をするのが好きなのではない。洗濯なんかは子供のころからどうして人が汚した物を俺が綺麗にしなきゃいけないか理解不能だったら、やったことがない。
 だから昔は嫌いだった。
 お空の下に自分の下着だのパジャマだのがひらひら踊ってる風景が不快極まりなく、晴れの日でも気にせず乾燥機を使った。
 床に山になって置かれた洗濯物の中から自分の物だけ引き抜いて畳んでいれば、よく親に困った顔をされた。
 そうつまり、いい思い出など皆無だった。俺と洗濯との歴史は。

だけど、

「は、んあっ、…ど、け…ふぁっ! また洗濯、ひうっ、しなおさねぇっ、と…いけなくっなるっ…!」
「すればいいじゃん」

 今、俺は楽しくて仕方がない。

「何回でも洗濯すればいいよ」
「するのっ、俺だっろ、あっ、ぁああっ!」

 ドクンッ、と掌の中で熱くなったシズちゃんのモノが大きく脈打ち、先っぽから白く濁った液体が勢い良く飛び出す。

「ぁ…はっ、あ、う」

 液体はその後も何度かビュクビュクと溢れ出、汗でわずかに湿った男らしい腹筋とまだ太陽の匂いがする真っさらな洗濯物を汚した。
 こんな光景がかれこれ二週間近く続いている。
 すべては二週間前。俺が初めてシズちゃんの洗濯物を畳む姿を見て感動したのが起因である。
 あれは感動した。むしろ興奮した。両足をぴたりとくっつけて正座している時点でヤバかった。その破壊力ですでに正常な思考はふっとんだ。
 腿の上に洗濯物を乗せて、一旦そこで皺を伸ばす動作もヤバかった。だってつまりはシズちゃんが自分で自分の腿を撫でてるわけで。おまけに丁寧に伸ばすから手つきがこの上なくエロい。
 袖を畳む時に顎で服を挟む姿も可愛かった。その時に僅かに開く口は誘っているようにしか思えなかった。
 極め付けは、遠くの洗濯物を取るために四つん這いになったあの姿。しかもその時取ったのが俺の下着で、それを他の同様腿に乗せて皺を伸ばしてなんてされたら、理性が持つわけがないでしょ。

「シズちゃん」
「ん? どうした臨也。どっか出掛けっおわぁっ!!」
「無理無理無理無理」
「はっ!? お前何言って…って、ちょっ、何する気だ! やめろっ、離せっはぁっん!!」
「いっただきまーす」

 その日以来、俺はシズちゃんが洗濯物を畳み出すと仕事を一時中断してその姿を眺めた。眺めているうちにそれだけでは満足できなくなるから、隙を狙っては洗濯物の山の中に押し倒した。
 そして今日も、解れているボタンに気を取られた彼を後ろから襲い今に至る。

「あーあ。また汚しちゃったね」
「…っ、誰のせいだっ」
「シズちゃん」
「なんでそうなるっ!」
「だってシズちゃんがエロエロしく洗濯物を畳むのが悪いんだもん」
「意味分かんねぇ!! …っひぁっ!」

 拳か足が飛んでくる前に、今日はまだ何も入れていない秘部へと指を滑らせた。洗いざらしの洗濯物から粘液を絡めとり、淵に軽く塗った後奥へ入れる。

「っく…! あっ、ぁひっ…ぅあ」
「ほらこんな簡単に指入ってく。本当、シズちゃんはエロいね」
「いっ、ぅな…ッや、めっ…ふぁ、あぁっ!」

 ズブズブと根元まで休まず入れ全部入ったところで一旦動きを止める。そのまま暫く何もしないでいると、シズちゃんが僅かに自ら腰を動かし早くもとろけ始めた瞳で俺を見上げた。

「…いっざ、や?」

 物欲しそうな目で見つめられ、危うく最後の砦が崩落しそうになる。だがまだ我慢だ自分。負けるな自分。

「シズちゃん、洗濯物の続きしたい?」
「え?」
「さすがに毎回邪魔するのは悪いかなって思って」

 ああ、その顔。その顔。
 シズちゃんが綺麗に洗った物をシズちゃんのモノで汚すのもいいけど、自分で綺麗した物の中に埋もれて赤黒い欲情に塗れていく彼を見るのも堪らなく興奮する。
 あ、また少し腰動いたね。一回動かすともう我慢できないでしょ? ほら、徐々に徐々に動かし方があからさまになってるよ。
 さあ、考えて。

「この後、どうしたい?」




「シズちゃん、洗濯物の続きしたい?」
「え?」

 指を一本だけ入れた状態のまま動きを止められ、どうしたのだろうと声を掛ければそう聞かれた。

「さすがに毎回邪魔するのは悪いかなって思って」

 それはつまりここで終わりという事なのだろうか?
 終わればまた洗濯に戻れる。これ以上余計な洗い物も増えない。それに今汚してしまったものはまた洗い直しだから、その二度手間分タイムロスすることになり、他の家事とのスケジュールを考えれば作業をするのは早いほうがいい。
 だけど――ここで、終わり? 
 ここで。このまま。これだけで。終わる。止めてしまう。止められてしまう。
 そこでようやく、自分が断続的に腰を動かしている事に気が付いた。

「この後、どうしたい?」

 ああ、この顔だ。この顔。くっそ、こいつは全部分かって言ってやがるんだ。だけどもう駄目だ。また今日もこいつの思い通りになっちまうのが、悔しくて堪らない。でももう、耐えられない。

「つ…づき……」
「何、シズちゃん? もっとちゃんと言ってくれなきゃ分かんないよ」
「続きを、んッ、して…」
「指を増やせばいいの?」
「ちがっ…う、臨也の……はぁ、中に、あっ、入れ…て…」
「あっはは。自分から腰動かしちゃって、シズちゃんエローい」

 煩い。黙れ。そんな事自分が一番よく分かってんだよ。

「でもオナニーはもうお仕舞い」
「ああぁっ」

 グチュと音がして、中途半端な位置で止まっていた指が素早く引き抜かれた。代わりに、すぐに臨也のモノがひくつく後ろにあてがわれる。

「俺が限界なんだよね」
「ぁっ、ひぐっ…んぁああああっ!!」

 指とは圧倒的に質量の違うモノが一気に突き入れられ、圧迫感に一瞬息が詰まるも、押し出されるようしにて肺の中の空気が嬌声となって口から吐き出た。

「あっ、はっ…い、ざやっんぁ、」
「そんなに強くっ、洗濯物掴んぢゃって、シズちゃんっ子供みたい」
「んっ、はあっ…、ちっが、ァ…ッく!」
「でもやってる事は、大人がする事っ…だけどね」
「あァッ! やっめ、ひぅっ」

 『子供』と言われ、不意に幼い頃洗濯物に埋もれた記憶が蘇った。あの時と今との状況の違いに全身が羞恥で熱くなる。思わず顔を隠そうとすれば太陽の匂いが鼻をかすめた。それが余計に興奮を誘い、繰り返し繰り返し前立腺を擦られ一度飢餓感に苛まれた肉体はもう限界だった。

「はっ、はぁあっ! い…ざや、おれっもぅ…」
「イッちゃう? いっいよ、思い切り、出しちゃいなよッ」
「ふぁっ、あッん…ぁあっ、ああぁあっ!」

 最奥をズンと突き上げられ、生ぬるい白濁が自身の腹を汚した。間もなくして、体内に臨也の熱が放たれたのを感じた。





「あっれー。シズちゃんどこいっちゃったんだろう。そろそろセック――じゃなくて洗濯物を畳む時間なのに」

 翌日。昨日のシズちゃんの可愛い姿を回想しながら今日はどんな風に可愛くしてやろうかと思索しながら、いつも彼が作業をする部屋に来てみれば、不思議や不思議。俺を誘惑して止まない正座姿はおろか、洗濯物すら見当たらなかった。
 俺のことを警戒して畳む部屋変えたのだろうか? と、開け放ったドアの前で首を捻っていると、背後からクールな低音ボイスが降ってきた。

「何してんだ、臨也」

 来た来たと振り返れば、そこには大きな山を抱えた愛しの金髪男子。

「シズちゃん待ってたよ! 今日も元気にせ…って、あれ? あれれ? それ、何?」
「新聞紙」

 うん。それは見ればわかるよ。そうじゃなくてさ。

「なんで新聞紙そんな沢山抱えてんの?」
「切るんだよ今から。新聞紙色んな大きさに切って常備しとくと便利だから」
「どこの主婦!? っていうか洗濯物はっ?」
「お前が出掛けてる間に終わらせた」
「終わらせた!?」

 あれ、気のせい? なんかシズちゃん笑ってる? しかも笑い方が怖いような…。

「え、あのさ、それって」
「これからそうする事にしたから」

 そこ、邪魔だ。と更に笑みを深めていわれ、俺は泣きながらその場を走り去った。




洗濯なんか嫌いだっ!
(いいもん。出掛けない日だってあるもん!)



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