ラブロマンスは背中から
ジャックはぼくの背中がすきだと思う。
なぜなら、率先して寄りかかってこようとするからだ。(それを僕はすごく好意的に受け取っている。)僕はそんなにあったかいわけでもなかろうに、そしてまたそんなにつめたいわけでもなかろうによっかかってくるんだから、これはもう「好きだ」って捉えるしかない。
「ジャック、おもいよ」
「居候のくせに、少しは役に立て」
「ええ〜…」
自分だって無職なくせに、よくいうよ。そう思ったけれど口に出すことはなかった。口に出しちゃったが最後、僕は多分暴力反対!とかなんとかいつもの台詞をいつもみたいに続けて口に出すはめになるはず。毎日の恒例行事だけどそれだけはそろそろ避けたかった。
ガレージの奥、いつもどおり座り込んでDホイールちゃんを弄っていた僕の背中によっかかってきたジャックはそれから無言で背中越しに何かしているので、僕は話しかけるタイミングをなくして押し黙ったまま、目の前の画面に集中した。
(背中じゃなくて、ぼくがすきだったらいいのに)
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