小説 | ナノ

腹がへったとなくけもの

※VJ捏造ブルジャちゃん。遊星側だったブルーノさんが、ジャックさんのほうにつくという自分設定です。そもそもVJごっずにブルーノさんはいないです。でたらいいな〜っていう願望の元に出来上がった設定です。気にしない方のみ。



ジャックはあまりお酒が強いほうではない。

20歳の誕生日を祝う相手にぼくを選んだのは、多分、なんとなくだったんじゃないかな。それかお世話してくれるのがぼくくらいだったか、どっちかだ。絶対王者とか呼ばれてる彼に近づいて、遊星たちを裏切って拾われたふりして、気づいたら1年もたっていて、ぼくの記憶は一向に戻るような気配を見せない。したいことや、しなきゃいけないことはわかるのに、肝心の「なんのために」がぜんぜんわからなくてぼくは今でもこうして、「絶対王者の飼い犬」に甘んじていたりする。遊星の側にいたぼくがうまいことジャックの側につくことができたのも、ぼくがジャックに近づけたのも、ジャックがうまいことぼくを彼のDホイール専用のメカニックにしてやろうと思ったことも、全部全部偶然だ。目が覚めたら、このまま全部消えてしまうんじゃないかって思う。起きたらなんにもない灰色の空間にいて、「ああ今までのは幸せな夢だったんだな」って思う日がくるんじゃないかって。

たまにそういうことを考える。どちらにしろ、記憶がないぼくからしたら、今も過去も全部全部夢の中みたいなものだ。

「おい、おい、きいてるのか、貴様」
「ん、…あ、ごめん、」

べろんべろんに酔っ払った君の瞳ったらありゃしない!少しだけ緩んだアメジストの瞳にぼんやりと浮かぶ涙がきれいできれいで、ぼくは君の瞳を左手で軽くぬぐった。その手を煩わしそうに振り払って、君は透明のグラスになみなみと満ちた波状に光を映す琥珀色を一気に飲み干す。長官にもらった、たっかいウィスキーだっただったような気がするけれど正直ぼくには大して味がわからない。ぼくがさっき悩みに悩んでかったやすいシャンパンも、長官がちょちょいと部下に頼んで手配させてウィスキーもおんなじ味だなんて、悲しくなっちゃうものだ。

「そんなにペースあげて飲んだら危ないよ」
「べつに、どうだっていい」

そういって誕生日だっていうのにうつろな瞳をする君の横顔がちょっとだけさびしそうだった。どうしたの、とは聞けなかったし、さっきからずっと白い指先がテーブルの上でぼくの指先に触れていることも、ぼくはなんにも聞けやしない。20歳になった君の瞳は、つい数時間前の、19歳だった君となんらかわりはない。強気な瞳。何者も近づけさせない、冷たい瞳。

「おい、犬、甘えさせろ」

犬扱いされるのはとっても心外だったけれど、ほかならぬジャックの頼みだったし大体ぼくがジャックの犬なことは自分でもちゃっかり自覚していたので、なんにも言わずに、差し出された腕をくぐって彼の腰を両手で引き寄せた。お酒がすっかりまわっている体はくったりとしていて熱を持っている。あっついよ、もう飲むのやめたら?といいそうになったけれど、その一言は言えずにそのまま飲み込んだ。このまま、お酒を飲んだジャックが一体どんなことになってしまうのか、ぼくは見ていたかったのだ。

「ああ、暑苦しい、やっぱり離れろ」
「ええ、そんな、君が甘えさせろとか言ったんじゃない、」
「うるさい、不快だ。さっさと離れろ」

きつい言葉尻にひるんでぼくが離れると、彼は満足そうにのどを鳴らした。ねこみたい、ねこみたいな人。気まぐれにいじってきたり、気まぐれに離れてみたり。そのねこみたいな人はまた気まぐれに、甘えるみたいに、ぼくの唇に唇を寄せる。

「お前、俺が好きなんだろう、」
「え、」
「誕生日おめでとう、とでもいって、この俺に奉仕してみろ」
「…さっきも言ったよ」
「聞いてなかった」

他者の気持ちを蹂躙するその瞳、さっきまでお酒の魔力でゆるんでいたアメジストは今じゃ硬度を取り戻して楽しげにゆがむ。多分彼は、他人の気持ちを蹂躙できるのならなんだっていいんだろう。それがぼくだったとしても、他の人だったとしても、関係ないのかもしれなかった。お酒でほてった腕がぼくの首を捉える。がんじがらめだ、逃げ場がない。

「…お誕生日、おめでとうジャック」
「ああ、それで?」
「あいしてるよ、」

蹂躙されたぼくの気持ちを両の足でしっかり踏みつけたまま、満足そうに王者は笑った。



13,1,11 Happy Birth Day ! Jack=Atlas!




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