小説 | ナノ

唇の先に愛

キスだけしてる。さっきからずっと。

キスだけがしたかったわけじゃないんだけど、遊星が離れるとあんまりにも悲しそうな顔をするので、さっきからずっとキスだけしてる。三十分くらいしてる。キスばっかりした遊星の唇は赤くなってかわいい。
キスだけしてる。おれが、おれは、他にだれもいないポッポタイムで遊星と、キスだけしてる。
もう夜もすっかり遅いのにジャックもクロウもブルーノもだれも帰ってこないから、きっと今日はもうかえってこないのかもしれないなあなんて思った。帰ってこなきゃいいのに。とくにジャックなんて今朝もブルーノと大喧嘩して、風馬のにーちゃんのうちに肩を怒らせながら家出してったので、そりゃあ連れ戻すには一苦労するだろう。ブルーノお疲れ様。クロウはクロウで、今朝アキねーちゃんと連れ立ってどっかにいったので、もしかすると夕飯ぐらいはご馳走になってるのかも。
遊星とキスしながら、おれはそんなことを考えた。

「ん、」

遊星がたまに出すなんかちょっとおんなのこみたいな声がかわいくて、好きだ。遊星ってもう20になるんでしょ?そんなにかわいくって大丈夫?っておもう。そんな遊星はかわいいんだけどさ、おれはキスだけしたいわけじゃなかった。もっといろんなことしたかった。けど遊星がいつまでだってキスしてたいっていうなら、じゃあおれもずっとキスがしてたい。だってキスにはおわりがない。エッチにはおわりがあるけれど、キスにはおわりがないのだ、すごいことじゃないか!

「は、あ、」

いきをもらして、遊星がおれの服にしがみついてくる。かわいいねっておもって、キスしながらべつのところもさわってみた。やさしくさわってみた、本当はもっともっと遊星のいろんなところにさわってみたい。そしたら遊星がびく、って体をふるわせたあと、キスの合間にちっちゃい声で

「もっとして、」

なんて言ったもんだから、おれはこのまま死んでしまってもいいやって思った。

12,11,3


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