小説 | ナノ

昼下がりと犬


眠い、ぼくは眠い。とにかく眠い。

昼下がりの講義ってのはどうしてこう眠いんだろうなあとか思いながらあくびを一つ。窓際の一番後ろを陣取ったぼくに、それでも居眠りは許されない。なぜなら、ぼくの隣で堂々と机に伏せて寝ている男のぶんまできっちりきれいにわかりやすくノートをとっておかなければならないからだ。
そんでもって、講義終わったあと、ぼくはにっこり笑いながら「ここ、今回の範囲だから」なんて言ってノートのコピーをそっと手渡すんだ。我ながらかっこいいと思う。さすがだ。
眠るジャックの横顔はほとんど見えない。眉間によった皺と閉じられたまぶたを彩る金色のまつげしか見えない。ぼくといえば最早それだけで事足りるし幸せなので、黒板に並ぶ文字を一文字一句のがさないようにおいながら君の横顔をチラチラと覗き見る。このあと暇かな、とか、よかったら食事でも、とか、もうただたんにおなかへったーお昼ご飯まだなんだよねとかさ、君を誘い出す文句をいろいろ考えた。だけども、きっと寝ぼけたような顔した君の答えなんか考えなくてもわかる、きっとノーだ。ぼくの片思い。所詮片思いさ、悲しくなるね。どんなに尽くしたってどんなに君への誘い文句を考えたって、ジャックはぼくのことなんか、大学の講義とおんなじくらい興味がない。

片思いってなんて虚しいんだろう。でもやっぱり、君が喜ぶと嬉しいし君が悲しいとぼくも悲しいよジャック。
だから今日も明日も、ぼくは眠くて眠くて仕方ない目をこすりながら、めんどくさくて眠たい昼下がりの講義のノートをとり続けるのだった。おしまい。

12,9,22


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