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11帰りましょう、僕と一緒に


風のない夜だった。じり、見えない圧力が、体を押す。耐え切れず後退しかけると、キャノン砲がルナに向けられスィンドルはロボットモードに変形した。久しく見る姿に息を、呑む。


『…待っていたんですよ、この機会を。』


淡々と告げられる言葉。震えを抑えられず、ルナはただスィンドルの伸びてくる手に足を竦ませた。
また会えたのは嬉しい。でも何を考えているのか解らない。だが、明らかに機嫌はよろしくないようで、掬い上げられた後も彼女は小さく縮こまった。責められている感覚が肌を刺して。


「……、」
『何故そんなに怖がるんです?声が聞きたいんですけどねぇ』


その声にそっと目を開けて、彼を見上げる。覗き込むスィンドルの表情は悲しげでルナは感情を揺さぶられる。胸が痛む。無意識に手がゆっくりと伸びた。届かない距離にスィンドルが顔を寄せる。冷たい金属に触れる小さな手。懐かしいその感触にルナは漸く息を吐き出した。


「スィン、ドル…」


彼女の声に反応して、すっと目が細められる。ふわりと髪を撫でる指先。くすぐったさに身を捩ると、手のひらがルナを包み込んだ。


『…彼に仕事が入る機会を伺ってました。乱暴は働かれていないようですねぇ。…ただ』


指の腹で顎をぐいと上げられる。スィンドルが見つめるのは首元のリング。外れないようきっちり填めこまれたそれを鋭い眼で見つめた後、彼はおもむろに口を開いた。


『まったく…無粋な泥棒のやりそうな事ですよねぇ』


ほとばしる殺気。刹那、柔らかくなった紫の彼の瞳が赤く染まったような、そんな錯覚に捕らわれてルナはくらりと眩暈がした。
閉じられたルナの瞳に、スィンドルは片手に彼女をそっと移す。そして、胸元から小さな懐中時計を取り出すと彼女に向かってそれを掲げた。


『甘いですよねぇ、ロックダウン。武器商人の私がこんなもの、外す事くらい何でもない。』


あっと声をあげる間もなく、気づけばスィンドルは銀色のリングを裂いていた。
思わず恐怖で目を瞑る。だが爆発は起こらず、彼女は首を傾げながら再度恐る恐る目を開けた。
スィンドルは含みのある笑みを浮かべていて、彼女はただその取り外されたものを凝視する。嫌な、予感がする。
くるり。指先でそれを回し、スィンドルは口を開いた。


『…ルナ、先に謝っておきます。どうか喚かないで下さい。』


責任はとります。

スィンドルはそう言うと、彼女のマンションにそれを乱暴に放り投げた。


嗚呼、なんて酷い人。

(残念ながらキミの帰る場所は私を除いてもう作ってあげられそうにないんですよねぇ。)
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使用アイテムは初登場回のレプリカ版だと思われ。
2012 10 27

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