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01それから、


天井が見事に抜けた格納庫。取りつけた最新設備が先の戦闘により藻屑の泡と化したワシントン基地であるが、復旧は着実に進められていた。
明るい太陽の下、動けるオートボット達が搬入、構築作業を手伝い、外枠の修繕作業は思いの他、順調だ。


『…まだ寝てた方がいいんじゃねェのか。』
「いいの、体を動かしてた方が気が紛れますから。あ、お早うございます!オプティマス!ラチェット!」


低いエンジン音と共に入ってきたフェラーリの助手席から静かに足を地につけるヒスイ。彼女がきちんと立ったのを確認してからディーノはロボットモードに変形した。あちこちの包帯はまだ取れないが、彼女もまた積極的に基地に顔を出した。
ラチェットの傍に歩み寄ると、彼女は人間用の椅子に座りコンピューターを起動する。パソコンから伸びる電子ケーブルが伸びるのはオプティマスの肩。大型パーツ以外の細かな部品の治療は自己修復プログラムの強化によって進めていた。
工学についての話をするヒスイとラチェットを退屈そうに見つめるディーノ。
彼が胡座をかいてその場に座れば、サイドスワイプが機材を持ったまま軽やかに眼前へスライディングした。


『おい、ディーノ。基地に来てまでパートナーにべったりかよ。』
『悪いか。目を離すとコイツは生傷が絶えねぇ。』


サイドスワイプは否定せず返してきた事に内心ひどく驚く。以前の彼なら堂々と一人の人間の心配をするなど考えられなかったからだ。
にやり、目を細めるとそれに気付いたヒスイがほんのり頬を赤く染めて照れくさそうに笑む。
可愛い。彼女はきっと同族なら少し年上なのだろうが、こうした反応が初々しくついからかいたい衝動に駆られてしまうのだ。


『ヒスイ、怪我が治ったらまたどっか行こうぜ。いい場所探しておく。』
「え?…ああ、うん、分かった。ありがとう、サイドスワイプ。」


ディーノにウインクして、サイドスワイプはまたターンして戻って行く。不満げに表情を歪めたディーノだったが、何を言うでもなく黙ってヒスイに視線を戻した。
画面に向かう彼女は真剣そのもの。浮かれるでもなく、ただ黙々とオプティマスと対話し作業を進めるヒスイに嫌味を言う気も起きなかった。
彼女にとって友人は常に平等だ。それが男でも女でも、金属生命体でも。変わった人間。だが、だからこそ気に入った人間。纏う空気の心地良さは最近になって改めて気付いた。


『ヒスイ、』
「ぅん?どうかしましたか。今日は貴方もメンテナンスしておきます?」


向けられるのは優しい顔。ラチェットがその横で意地悪く笑っていたが、気づかない振りをしておいた。

隣に居る事が、当たり前。
そんな関係でこれからも共に在りたいと。
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2013 03 31

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