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26対峙


シカゴ市街地へ向かう敵機をディーノ達はビークルモードで一定の距離で追う。ヒスイには今バンブルビーが付いている。自分より幼いが信頼の置ける仲間であり、戦士。彼なら危機的状況に陥っても命を懸けて、ヒスイとサムを守るだろう。
だが迷いなくバンブルビーと共に街へ入った事が腑に落ちず彼はピリピリした空気を放っていた。
……行かせまいと行く手を遮るのは容易い。しかし、そうしなかったのは彼女もまた守ろうとしているのが分かっているからだ。ヒスイ自身の手に届く世界を。


『焦るなよ、ディーノ。近付き過ぎたら』
『誰に言ってる。』


ビルに貼り付く彼らが乗る戦闘機を見守る事しか出来ない歯がゆさにまた更に苛立ちが募る。まだまともに言葉すら交わしていないのに。謝罪なんて柄ではないが、戻った事を微笑んでくれたヒスイを失いたくない。
銃口を空に向け、ブレードをすぐ抜けるようディーノは体制を整えた。

GPSによって割り出されたペントハウスは15階の窓辺だけ白いカーテンが揺らめいていた。息を殺して建物につけると、サムが先にバルコニーへ飛び移る。
慌てて彼のフォローにと後を追おうとしたヒスイだったが男性の足音と話し声に身を潜めた。サムは既に中へ飛び込んでしまった。焦る気持ちに体が震えると、バンブルビーが彼女の体にそっと触れる。彼の澄んだ青い眼に心強さを感じると、ヒスイはマグナムの安全装置を静かに外した。
内部から銃声が一発聞こえる。彼女が見上げるとガラスが割れ放られたサムがそのまま下へ落ちてきた。


『ビー!右にきって!』


サムを受け止め、怪我の有無を確認する。幸いにも怪我はなく、


「カーリーが、カーリーが中に!!」


バンブルビーはそのまま機体を浮上させた。
建物の中に居るサムの恋人。走り寄る彼女の背後に、ヒスイは見たくなかった翼を見た。無言で銃を構え、引き金に手をかける。
カーリーの援護に銃弾を放つ。赤い瞳が笑ってそれを交わし、待ちきれないと言わんばかりにオイルを牙の合間から垂らした。


「、バンブルビー!!」


カーリーが機体に飛び移った瞬間、二人を無理やりコクピットに押しやる。彼女がバンブルビーの名を呼んだ瞬間、ビーは小型銃をビル内へ放った。肌がざわついた。刺すような殺気に筋肉が緊張する。
弾幕の中から現れる銀翼の姿。ビルから離脱する戦闘機よりも遥かに速い速度でレーザービークはあっという間に距離を詰めてきた。


『会いたかったぜ?お嬢さん。』


お前を殺せる瞬間を楽しみにしてたんだ。

歌が聴こえた。マザーグース…以前彼が部屋を訪れた時に教えた歌だった。無意識に顔が悲しみに歪む。翼に穴を開けたと同時に銃を叩き落とされ、レーザービークは彼女の細い腕に喰らいついた。


「ぅ、ぐぅっ…!」
『ムカつくな。殺す気なく俺が倒せると思ってやがる。…ご主人様の命令だ、オマエは特別綺麗に死なせてやるよ。』


胸を貫こうと、音を立てて変形が始まる。
鋭い槍に似た切っ先がヒスイの前で太陽の光を反射し光った。

さようならを謂うこの瞬間をボクは待ち望んでいた。
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2012 12 19

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