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23幕間-Chicago-


奪う事は容易い。命も、身体も。ディセプティコンに攫わせてもいい、レーザービークならより確実だ。

――だが、それでは面白味に欠ける。
赤い眼を細めて、壊れて行く薄暗いシカゴの街をサウンドウェーブは見つめていた。
逃げ惑い、腐蝕銃によって一瞬で死んでいく人間達。呆気ない。立ち上る粉塵で昼か夜かも判らない空間で闇に紛れてただ消えて行く。


『……アレはこんなつまらない殺し方はしたくないものだ。』


屈しようとしない心。デュランとは違う、生死を前にしても折れなかった女。
莫迦な意地。しかしそれは退屈な地球での政略に色を添えた。もっと、もっと痛めつけて。傷つけて、あの女をいつも守っていたあの赤いオートボットと同じ色に全身を彼女の血で彩ればそれはなんと美しい事か。

暗闇に銀翼がひらり、舞う。
肩に降りた血塗れたドローンにサウンドウェーブは視線をやると、再び街へとその眼を向けた。


『…アイツは此方へ向かいそうか?』
『来るでしょう。動かなければウィトウィッキーの女もこちらの手中…質をちらつかせれば動かぬわけがございません。』


高らかに笑うレーザービークの喉をサウンドウェーブは一撫でする。彼に任せておいて失敗する事は殆ど無い。
絶望に染まったあの瞳を間近で見られる。高揚感に胸が駆られた。


『…ご主人様、お願いを覚えていらっしゃいますか』


レーザービークは恭しく頭を下げ、サウンドウェーブの肩で目を光らせる。
ログを辿る。彼女の喉元をうまそうに噛んだその映像が見えてサウンドウェーブは苦笑混じりに低く笑った。


『好きにしろ。俺があれを殺す前にならば。ただし、顔は傷つけるなよ。』
『承知致しました。』


上等な硝子のケースをディランに用意させておこう。彼女の頭部を飾る美しい器-柩-を。
上機嫌で羽ばたくレーザービークと、その鋭い翼に倒れていく人間はただの風景にしか見えず、彼はスリープモードに切り替えた。

嗤う。穏やかに。
最期の、永久に光が消えて行くその瞬間を想像して。
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2012 09 23

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