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10オートボットの定義


『ヒスイ!なァ、ヒスイじゃねーカ!』


格納庫の隅から、小さなラジコンカーが向かってくる。
懐かしい声にヒスイは足を止めて小さく笑みを零すと膝をついた。
彼に向かって広げた腕。ほぼ同時に変形して彼女の肩に飛びついてくる小さな金属生命体。ディーノが嫌な顔をした気配を察したが彼女は気にしない振りをする事にした。


「久しぶり。変わりないですか、ホイーリー。」


ヒスイの柔らかな質問にホイーリーは一瞬きょとんとした後、今度はわーわー泣き真似を始める。
戦力外でディエゴガルシアの基地を出た事。今は友人とサムの所に身を寄せているが、あまり良い扱いをされていない事。早口でホイーリーは彼女の耳元で喚きたてた。


『ヒスイ、オマエ今この基地にいるのカヨ!?俺、オマエと一緒に』
『オイこら調子に乗ンなよ。クソチビが。』


一緒にいたい―――。
それを言いかけたホイーリーにそれまで黙って見ていたディーノが、腕のブレードを光らせる。
元々、ホイーリーに対してディーノはいい顔をしなかった。元ディセプティコンである彼を毛嫌いしており、今でこそ攻撃までしないが今でもその瞳に仲間の念は微塵も込められていなかった。


『その人間は俺の保護対象だ。甘んじて触る事は許してやるが、命が惜しいならそれ以上は口に出さねェ事だな。』


ふん、とディーノは震え上がるホイーリーに睨みをきかすと、ちょうどゲートに戻ってきたオプティマス達の方へ歩いて行く。
ヒスイはそれを少し寂しく思うが、人間である彼女には計り知れない程昔から敵同士だった間柄だ。
穏健なオプティマス達のように分け隔てなく接してあげて欲しいと思うが、ディーノにそれを自らが諭すのも違う気がした。


『…ヒスイ、何であんなおっかねェ奴と一緒にいるんだよ。俺、アイツ嫌いだ。』
「…ホイーリー。ねぇ、諦めないで。きっと分かりあえる日が来るわ。あなたはオートボットになったんだから。」


悪態をつき始めたホイーリーを、ヒスイは苦笑しながら優しく諭す。
柔らかく抱きしめてやると彼はそれ以上言葉は発する事なく、彼女にぎゅうとしがみついた。


『…今日、サムがディセプティコンに狙われたんだ。』
「!あの、男の子が…?」
『ヒスイ、ヤツら何か仕掛けてくるぜ。多分もう動いてるんだろうけどナ。』


気をつけろヨ。
そう言うと、ホイーリーは彼女の腕から飛び降りて器用に着地しポーズを決める。
手を叩いてそれに微笑むヒスイに、ホイーリーが嬉しさの反面、内心感じたのは、


(なァ、ブレインズ。)
(ん?)

人間を守るなんて、俺達に出来んのか?


殺すのはいとも簡単な事なのに。
―――――――――
2012 02 20

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