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番:黄金街01


※閑話。映画GOLD設定のネタバレあり。


出掛けるぞ、その日、ドフラミンゴの一言でドレスローザの城から連れ出される事になった。
普段の真っ白な無地の服から一転、ショッキングピンクのドレスに着せ変えられヒスイは混乱しながらもされるがまま。化粧を施され港で海賊船に乗せられると、通された部屋でドフラミンゴが寛いでいた。


「ほぉ、まだまだガキだが馬子にも衣装とはこのことだな。」
「…、何故こんな、何処に、」
「何、ちょっとしたバカンスだ。たまには大人の遊びに付き合わせてやるよ。」


宝石で首もとと髪を飾りながら、彼は楽しげに笑った。

***

数日して辿り着いたきらびやかな街はグラン・テゾーロシティ。島と見間違うほど巨大な双胴船だった。
全てが黄金で造られたその街は目を開けているのが、眩しいほど。見上げると空からは金色の雪が降っていて、ヒスイは何となくドフラミンゴの後ろに隠れた。彼が差す傘に身を寄せる。


「フッフッフ、何か視えたのか?」
「?いえ…、」
「…勘の良いガキだ。さて、着港するぞ。」


波止場に降り立った彼らの前に上等な車が二台つけられる。
ドフラミンゴはヒスイに傘を渡すと、一人先に、別の車に乗り込んだ。幾人か一緒に来ていたファミリーの中にモネの姿を見つけて久し振りの再会に彼女は顔を綻ばせた。


「モネ!」
「久し振りね、ヒスイ。たまにはと若様から休暇を戴いて。今日のドレス、似合っているわ。さあ、行きましょ。貴女の事は私が任されているから。」


相変わらずモネは美人で、この美しい街でも引けを取らない輝きを放っていた。
せめて服だけでもとドフラミンゴに着せられていて良かったと思う。ドレスや宝石など興味はないが彼女の隣に並んで恥をかかせない格好だけはしておかなくてはと思った。


「ここはどういう所なの?何も教えてもらっていないの。」
「ふふ、この街は世界政府ですら安易に手の出せない黄金帝の船。世界一のエンターテイメントシティよ。カジノはお好きかしら、レディ。」


少しおどけて差し出された手を、彼女は何の疑いもなく取る。本では読んだことがある。正直に告げるとモネはまた柔らかく笑った。

***

「―――わざわざ国王自ら出向いて戴き、恐縮です。
ジョーカー。」
「何、今回は家族の羽休めも兼ねている。お前に気にされる事じゃねぇよ。」


通されたホテルの最上階で、ドフラミンゴは高級なシャンパンで喉を潤わせた。目下に広がる黄金に輝く眠らない街は相変わらず拍車をかけて豪奢になっており、ゴルゴルの実の恩恵と能力者の見る夢がそのまま形を成していた。興業は順調なようだ。
彼の前に札束を提示した男は、にこやかに。しかし、獲物を見定めるよう視線を光らせた。


「ほう、それは港で連れていたお嬢さんの事ですかな?」
「フッフッ、詮索は勝手だがな。テゾーロ、俺のファミリーに手を出すようなら此方も出方を変えるんだぜ。」
「まさか。貴方のモノに手出しなど。少し興味がわいただけですよ。」


黄金帝は恭しくそう述べると、品の良い作法で自らもグラスを手に取った。
黄金帝ギルド=テゾーロはこの街の絶対的君主であり、ゴルゴルの実の能力者でもある。彼は自在に金を操るその力でこの巨万の富を得、今、世界の中でも確実に大きな権力を持ちつつある。
悪魔の実を盗んだ当初こそ、その制裁の為にドフラミンゴが消そうとしていた人物だが、黄金を支配するこの男との取引は天竜人とのコネクションをより強固なものに作り上げていった。

一通り、話し合いを終えて材料の金を下げさせる。
テゾーロの秘書が入れ替わりで入室し、二人に丁寧に頭を下げた。


「…テゾーロ様、ドフラミンゴ様、御一行様は只今、二番カジノにいらっしゃいます。」
「ほぅ。ジョーカー、どうでしょう。宜しければこの後、少し皆様にご挨拶させて頂いても構いませんかな?」
「好きにしろ。何ならあれとひと勝負してみたらどうだ?」
「ははは!面白い…!ではお言葉に甘えてお近づきになりましょう。」


テゾーロは内心、ほくそえむ。あの、華奢な少女の何がドフラミンゴの気を引くのか。平凡なただの子供を天夜叉が側に置くはずもない。
映像でんでん虫から送られてくるモニターをテゾーロは視線をやる。画面の中の少女は平然とした顔でゲームを掌握しており、ドフラミンゴはそれを見て不敵な笑い声をあげた。

――――――――――
2017 04 09

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