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11迷走


真っ先に頭に浮かんだのはヒナの顔だった。
相談したい。けれど、携帯の画面を見つめて、そのまま連絡はしなかった。
あれから家へ帰ったヒスイは自宅の部屋で一人膝を抱えた。

(…皆、悪いものでも食べたんじゃないのかな、)

真剣に悩む。ローは昔、小さい頃からよくしていたからともかく、ドフラミンゴやスモーカーみたいな自己がきちんと確立された人間が平々凡々な自分に好意を示す事実がヒスイには理解出来なかった。

ため息をつく。返事は必ずしも要らないと言われて余計に困った。じゃあこれからどうすればいいのか。思い悩んでいよいよベッドにダイブした。


「…私、恋愛なんてうまく出来ないのに。ていうか、したことなくない?」


小さく嘆く声しか出なかった。

***

「えっ、スモーカー君、告白したの!?」
「ああ、」


数日後、学校の食堂で顔を合わせたスモーカーとヒナはそのまま昼食をとることになり、流れでスモーカーは先日の件をさらりと彼女の前で口にした。淡々とした態度のスモーカーとは対象的に俄に取り乱すのはヒナ。口元を拭いて続きを促した。


「それであの子の反応は?」
「困ってたな。まあ、困らせる為に言ったんだが。暫く挙動不審になるかもしれんが構わん。」
「…スモーカー君、」
「そんな目でみるな。悪気はない。つい、弾みだった。俺はあいつを離したくないが、あいつの意思は尊重するつもりだ。別にあいつが俺を選ばなくても構わない。」
「え、あのこ、他に好きな男なんているの?」
「さあな。はっきりとは言わなかったが。」


スモーカーの愛情は情熱的なものではない。だが、確かな絆と、この世界で共に生きてきた年月がそこには存在していた。ヒナはそれ以上追求せず、ハンバーガーを食べるのを再開した。
ちらり、とスモーカーの灰掛かった目を見つめる。穏やかになったものだと改めて思う。かつて海軍でいた頃は、生死の瀬戸際に立たされることも屡々で、優しい男だったが近寄りがたい雰囲気が消える事はなかった。

(ヒスイ、スモーカー君とならきっと幸せになれるのに…)

うろちょろして邪魔してる男は何処のどいつかしら。
迷惑ね。ヒナ、ちょっと興味。


「…ヒナ、お前悪巧みの時の顔になってるぞ。」
「あら、わかってるじゃない、スモーカー君。ちょうど今、ちょっと策を考えているところよ。」


彼女は綺麗に笑って、トレーの上に残された包み紙を握りつぶした。
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2017 09 28

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