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宝石箱の鍵は刺さったまま1(クロロ寄り)


※主はクルタ族。団長のコレクション。
旅団員と面識あり。


来客の滅多にない、大きくも小さくもない図書館。いや、図書館と呼ぶには語弊がある。この空間に出入り出来る人間は限られており蔵書は全て一人の人間によって持ち込まれた所有物だ。目の見えないヒカルはそこで音と匂い、感触で日々増える蔵書を完璧に整理していた。光を失ってもう数年。暗闇にも慣れ、生活にさほど支障はなくなっていた。


「……、だれ」
「やあ、分かっちゃったかい?◆」


カウンターに臥せていた顔をあげると小さな顎を骨ばった指が滑る。喉の奥で低く笑う忍び笑いに彼女は小さくため息をついた。絶にしてやってきた久しぶりの来訪者は彼女が苦手な男だった。顔を背けると、頬に温かな唇の感触が刹那触れる。


「ヒカル女史…相変わらず、可愛いネェ」
「気軽に触らないでいただけますか?本の事以外で貴方とお話する気はございません。」
「クック…冷たいなァ…◆団長ならいいのかい?」
「…。」


マスター…、心の中で彼を呼ぶ。彼女のこの狭い世界の主人は幻影旅団を束ねるリーダーであり、ひとたび仕事に出て行くとなかなか姿を見せなかった。
対してオフの時はここに入り浸っていたが。彼の気配を感じながら仕事をするのがヒカルはとても好きだった。
ヒソカの事は苦手だったが、仮にも旅団のメンバーである為拒絶する事はしなかった。


「仕事は終わったんですか?」
「ウン、まぁね◆」
「そうですか。」


じゃあもうすぐ彼も帰ってくるかな。彼女が緩やかに微笑むと、それまで軽薄に笑っていたヒソカの顔がふと無表情になる。普段、感情を表立って見せないヒカルを彼は気に入っていた。盲目の彼女は知るよしもないが、それは彼女の美しさを引き立たせ…また彼女の持つ緋色の秘宝を魅せていた。

(クラピカが知ったら驚くんだろうなァ…)

クルタ族の生き残りをクロロがお宝として手元に管理してある事実。記憶を失っているヒカルは都合の良い人形で、彼女自身は気付いていないがコレクションとしてこの空間に飾られていた。

―――たまには生きた宝もいいだろう。
そう言ってクロロはヒカルを軟禁し文字通り籠の中で飼っていた。何故、自分が記憶を失ったかもどうして目が見えないかも分からないまま大切にされている彼女がヒソカは少し憐れで、またとても綺麗な玩具に思えた。


「ねェ、ヒカル。今、暇だろ?ボクが外に連れてってあげようか?」
「用があればクロロが付き合ってくれるので結構です。きっともうすぐ帰ってくるもの。」


ああ、馬鹿だね。キミの信じきってるその男はキミの家族も友達も奪った張本人なのに。ヒソカはヒカルの髪を撫でて柔らかい頬をそっと突いた。


「ねェ、団長が死んだらボクがもらってあげるからね?」
「何を、馬鹿な事…」
「いいから◆約束だよ」


欲しいものは彼の命、だけのはずだったんだけど。
―――――――――――――
2014 03 19

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