×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



09Darkside Children


ヒーリンに帰ってきたレノは、ロッジの下に停まっているバイクを見て建物内に駆け上がった。
勢いよく扉を開けると、ルーファウスが振り返る。中には彼しかおらず、レノが室内を見渡すと、彼は中へ入るよう促した。


「よくやった、と言いたいところだが、私情が漏れすぎだ。先に報告を済ませたまえ。」
「…っ、了解だぞ、と。」
「彼女は今、此処にはいない。また戻るとは思うがな。」
「…あいつ何処に、」
「さあな。敵を見極めてくると。…ツォンとイリーナは、」
「ドジッたぞ、と。死んじゃいないことを祈るが。」
「…そうか。確率的にはまだ生きている筈だ。お前が持ち帰ったものがあれば奴等も迂闊には人質を殺せまい。…クラウドに至急連絡をとれ。此所へ来るようにな。」
「クラウドに?」
「―――何、ちょっとした撹乱だ。私も急ぎ相手の力と出方を探らねばなるまい。」


ルーファウスはレノから箱を受け取る。
クラウドに電話しながらもレノはヒスイリアが気掛りだった。
残された着信に折り返しても電源は入っていなかった。
逸る気持ちが彼を苛立たせ、もどかしさにレノは乱暴に頭を掻いた。

***

マバリアの応用でヒスイリアはヒーリンのロッジを中心にバリアに似たものを張った。
出入りに支障はないが、空間的な把握をぼやかす細工だ。彼への協力は今回はこれだけ。それにしてもルーファウスの大胆さには驚いた。

(敵が此所へ入り込めないのは困る。カードは得た。対話を始めてこそ、私の闘いを始められる。)

息を潜めて待つ。
やがて、黒い人影が一つ現れた。


「…」


銀色の髪。魔晄色の瞳。まだ少年の粋を出たばかりのあどけなさと、禍禍しい空気を合わせ持った若い青年だった。
その外見に身震いする。ジェノバの特徴を浮き彫りにさせる容姿に彼女の目は鋭さを増した。
森の入り口で青年は足を留める。それまで無表情だった彼は静かに辺りを見渡してゆっくり笑みを浮かべた。


「やあ…、漸く会えたね。姉さん?」


セフィロスの声ではない。当たり前だが、少し安堵した。
ソードに手をかけたまま、ヒスイリアは死角から彼を見つめる。答えない呼びかけに青年はため息をつくと不機嫌そうに眉を寄せた。


「無視してるつもり?感じ悪いなあ…。さんざん神羅に玩具にされたのに、まだそっちについてるの?」
「貴方、誰。」
「カダージュ。僕の名前はカダージュだよ、ヒスイリア。」


すぐ背後からその声が聴こえて、ヒスイリアは武器を抜いた。剣戟で火花が散る。視線が絡むと、カダージュは暗い眼で綺麗に微笑んだ。


「会いたかったよ。母さんを殺した、セフィロスの兄妹。貴女が消えれば少しは母さんの杞憂が無くなる。」
「…」
「でもね、困った事に貴女の事は好きなんだ。殺したくなんかない。ねえ、一緒に母さんに謝りなよ。姉さんはどうしたって僕らと同じなんだから。」
「お断りするわ。私は私よ。ジェノバに踊らされやしない。ルーファウスに全面的に協力するつもりもないわ。」


殺気の膨れ上がったカダージュを蹴り飛ばして、ヒスイリアは距離をとる。そのまま身を翻して、彼女は走った。
追い掛けてくる気配はあるが、振り切れないほどではない。
このままロッジ近くまで誘導してヒーリンを離れる事にした。ルーファウスはうまくやるだろう。ひとつ、レノの無事を確認出来ていないのが、気掛りだったが。今は信じるしかなかった。


「あはは、姉さん。楽しいなあ。貴女は愚かだ。何をしても貴女は死ぬよ。星痕に身体を喰い尽くされるのはそう遠くない未來だ。」


でもね、それでも母さんは赦してくれるよ。
貴女の魂が、ライフストリームに堕ちた時、本当の闇が訪れる。

さあ、鬼ごっこを始めよう。
終わりに向かう、この世界で。


闇の子供の笑い声に、彼女の腕から黒い血が流れた。
―――――――――――――――――
アドチル前日譚了。
2018 01 24

[ 52/53 ]

[*prev] [next#]