変えたい別れの分岐点

そういえばそんなこともあったような気がしてきた。身に覚えのない言葉をかけられて記憶を遡ったことも少し何分か前だというのに。ただ何となく懐かしいような感覚に陥っているのは何故だろう。

「丹星さん」

いつまでも自分を気にしてくれている彼女に、何となく嫌気が指す。
(これじゃあ本当に自分が悪者になってしまう。)
とんでもなく自分勝手な男だとつくづく思うが、一度決めたことだ。

「ごめんね、それでももう行かなくちゃ。」

悲しそうな顔をした彼女を忘れることはないだろう。そのまま固まったように動かなくなった彼女を置いて歩き出した。離れた自分に彼女は思い出したかのように一歩踏み出した。

さようなら、今までの自分。そして大切な皆。

大きく息を吸い込んで、目を閉じる。黒く染まった汚い空気が閉じた瞼からも見えてくる。このままじゃいけないから。この世界を変えなければ、そうすれば。

「きっとお母さんもお父さんも、皆で笑える。だから」

昨日よりも暗いその海に一歩足を踏み入れたところで、また声が聞こえた。
(もう戻らないよ、次に会うのは。)

きっと次の平和な時代の筈だと願って、そこへ堕ちた。それでも少し名残惜しいのは、

( 「丹星さん!!」 )

届くはずもないだろうと分かっているのに、それでも叫んでいた。あなたが向かう先はそっちじゃないのに。どうして、どうして行ってしまうんですか。

そして願いは叶わないままのお別れなんて認めたくなんてないけれど、それでも、いや、やっぱりそうなってしまったんだ。これが今なのか。

そして彼は黒の世界へ消えた。


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