「流星おはよー」
「おはよーさーん」

毎朝の掃除
寮生がいない間の掃除
それから風呂掃除

俺の一日は掃除で始まり掃除で終わる
挨拶をくれる奴らと適当に話したりして
それから最近は料理も始めてみた

「やっべ!これくっそ美味いやん!」

趣味の釣りもある
弟も寮生でいる
仕事でこんなに充実してるんだ
このまま平和を守りたい

「作りすぎてもうた…せや、生徒会に遊びに行ってみるもの楽しそうやな!」

今日やることのノルマは終わった
たまには学校に遊びにいってみよう
弟の学校生活も見てみたい
作りたてのスペアリブをパックに詰めて寮を出た

「ほー立派な学校やん」

何となく懐かしいような
(どことなく笑ってまうな)
苦笑いが零れる
誰も見ていないのは助かった
わざわざ未来のある奴らに俺の話は重い

(適当に入っちゃうか)

開いていた窓を越える
丁度授業後の放課のようだ

「女の子もいるんやなー」

男子寮の方を中心に仕事をしていた為
女子の姿は目に新しい
(俺の時よりもスカートめっちゃ短いやん)

階段を上り下りする女子の足元をチラリと見やる
そうか、これが噂のチラリズム
(これは痴漢も増えるな)

それとなくそんなことを考えながら学校を回る
見慣れた赤い頭を見つけて頭を掴む
ここは一年生の階

「ちょっ、なにすんねん!誰や!」
「一星、お兄ちゃんが来たで」
「は!?何しとるん!?」
「差し入れ持って来た」

スペアリブを渡すとそうそうこれこれ、とノリツッコミを貰う
もう放課後やから意味無いやんけ!なんて言葉を背中に受けながらまた昇る

(あ、生徒会室やって、ここか)

「…あれ?流星さん…?」
「あ、会長やんかー遊びに来たんやで」

ヘラヘラと笑う
いつ会っても彼は目を合わせてくれない
もっと仲良くなりたい気持ちは俺にはある
けどきっと彼はそうじゃないんだろう

「他の皆はいないんか、ほー立派やーん」
「あ、そんでな、俺差し入れ持って来てん」
「作りすぎでなー、良かったら食ってや」

あっ、ありがとうございます!
と何故か下を向きながらお礼をくれる
まだまだ若いんやからいっぱい食うんやで
頭をぽんぽんと叩いてやると彼は裾をぐっと握っていた

(俺嫌われてるんかな)

「なんかごめんな、じゃ、おっさんは帰るでー」

他の奴らにもよろしく頼むで
ひらひらと手を振りながら屋上に向かう
学校時代はよく屋上にいたなと場所は違えど空は同じ
重い扉を開いて外の風に当たる
前から自分は何か疎いところがあるとは思っていた
けど恐らくそれが昔ダメだった理由だろう

「変わり方を間違えたんやな」

自分に酔っている暇があるなら何か変われと自分に言い聞かせる
後ろを振り向くと会長くんが立っていた

「ど、どうしたん?」
「あの…」
「あ、一星のこと学校でもよろしくしてやってな、あいついい奴やから」
「…はい」

彼の悲しい顔に気づかないまま
階段を飛び降りる
自分だけ昔の感覚に浸ったまま
その場にしゃがみ込む彼の姿を俺は知らない

(彼らを支えてあげられたら)
(俺はそれでいい)
(悲しい人を増やさないように)

空回りで傷つけていることを知らない

「流星さん…」

「いい日やなー」



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