「煎場さんこんにちは」
「よう」
「あの、軽果さんは?」

口を濁す煎場に首をかしげる
頭を掻きながら私の目を見ると重たい口を開いた


「あいつさー」

「ストーカーってやつにあってたらしいんだわ」

「まあ気づいてなかったみたいだけど」

「そしたらさっき」


軽果が和菓子だってストーカーが気づいて
あいつの元に噛り付いちまって
急いでそいつ止めて
応急処置とったけど
こんなの初めてだからよ…

「最悪、わかってるよな」

そう告げられてから部屋へ通される
そこには布団に横たわる軽果さん
元から白い顔を青白くして苦しそうに布団を握っている

「け、けい…軽果さん…」
「っあ、ぅ、…も、…さん」
「辛いですよね…私ここにいますから…」

辛そうに口を開く姿が目に痛くて何より心が痛んだ
何も出来ない自分が不甲斐ない
力にならないことも分かっていながら彼女の手を握る

「あり、…が、と」

切れ切れと言葉を紡ぐ彼女に涙が溢れる
私には何だかその言葉がお別れのように聞こえた
零れた涙が彼女の頬に落ちる

「泣か、な…で」
「そんっ、なことっ…出来ない、で、す…!」
「大、丈夫…また、あ、…えま、す」
「いやです…!」

彼女の白く輝く柔らかい髪が窓からの風に揺れて私の側で流れる
飛ばされてしまいそうで消えてしまいそうなそれに手を伸ばすと彼女は笑う

「このままで心配かけるのもいやです」
「だからもう煎場さんに頼んであるんです」
「上手くいけば、また」
「ダメだったとしても、会いに来ますから」
「私、あなたを」

彼女の笑顔に目を奪われている間に
何故か彼女は消えた
何を頼んだの
上手くいくって?ダメだったらって?
あなたは私を…

「その続きは何なんですか…っ」

それから彼女の姿はこの店にない
無い面影を探して毎日のように通っている
お茶を運んでくれる彼女も談笑することも何もかも突然消えた
いっそ私も消えてしまおうか
そんなことを思ったこともあった
けど彼女の

会いに来ますから

その言葉を信じてまた今日も足を運ぶ


「いらっしゃいませ、もものさん」

「また、会えましたね」
「僕、約束、守りました」
「だから、泣かないで」


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