「…あったぞ」

日没まで間もない時間。
発見の言葉を聞いてほっとした反面少しの虚無感に襲われた依澄。


「助かりました」

東寺の手から鍵を受け取ると帰らなければと本能が語りかける。
本来ならば…
ここで殺されてもおかしくはないのだ。

「…じゃあな」

隠し切れなかった少しの悲しさとそれから少しの楽しさ。

「早く帰んねーとぶった切るぞー?」
「言われなくても帰る、…またな」

ひらひら手を降る、手を上げた三人が見えなくなる頃日が落ちた。

「ただいま、大翔」

なーう
帰ってきた依澄は何だかご機嫌だった。

「ご飯にしようか」

今日の夕飯はいつもより豪華だった。

(誰かがまた俺みたいに死人になった時まで)

「もう少しこの生活を続けような、大翔」

そう言って俺の頭をわしゃわしゃ掻き撫でる依澄に、今度は向かい合って話したいなと思ったのはまた今度叶う。

(材瀬さん)

(俺、今楽しいです)

食器棚に俺の茶碗が追加されるまで後少し。
その時はきっとまた、わからないくらいの薄い笑顔で笑うんだろう。
そう思って一つ鳴き声を出した。

「なーう」


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