「おはようございます」
「あらいらっしゃーい」

仕事の前に少しだけ寄ろうと足を運んだのはNINIs。
落ち着く雰囲気の店内に、鼻を擽るコーヒーの匂いが何とも言えない。
近くの椅子に腰を掛けてコーヒーだけを頼んだ。

「最近どうなんです?」
「ぼちぼちです」

店長のおをみと軽い会話をする依澄は死ぬ前は滅多に見られない笑みを浮かべている。
最近頬が緩くなったと本人も自覚はしているようだ。

「今日は仕事をしようと思ってるんです」
「ああ、天国コースの」

あの時命を落として、気が付いたら死人になっていた。
地獄コースを選び元居た職場の奴らに殺されてみるのも悪くないかなとも思ったりしたようだが、彼はそれを選ばなかった。

「これ以上俺の手は染まりませんから」

照明に手のひらを翳して見る。

白い。

それじゃあそろそろ、と喉を鳴らして飲み干す。
どうも、と薄く笑ったおをみに会釈を返して今の職場へ向かった。


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