(面倒臭い)

何この子
「ごめんなさい仕事中なので」

営業用の笑顔を貼り付けて
ひらりとその子をかわす
けど
左腕を掴まれて振り向く

「離して貰えますか」
「好きなんです!」
「ごめんなさい僕は」

(アイドルなんです?)

楽器も持たせて貰えないのに
俺は "アイドル" なの?

その先を口にしない俺を見る
まあ可愛いとは思うけれど
ごめんなさい

「仕事が一番なので」

口角をぐっと上げて言うと何故か怯えた顔をして手を離される

「気持ちは嬉しいです、これからも応援して貰えると、ね」
「は、はいっ…」

その子の肩を軽く叩いてロケバスへ体を戻す
さっきの子以外のファンだろうか、女の子達がロケバスへ目を向けている

(はいはい)

ひらひら手を振って湧き上がる奇声
何だか不思議な心境でシートに深く座り直す

(嬉しいけどなんだろう)
(耳と心臓が痛い)

「ヤスくん…何か怖かった」

キラキラ光るファンの持ったうちわか何かが目に焼き付いた後瞼を閉じた

(きっとただの風邪だ)



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