塗りつけた笑顔が剥がれなくなった毎日
トップアイドルなんかには勿論なれないままグダグダとバラエティ番組に精を出す
(何でアイドルなんて目指したんだっけ)
前までは美味しくて輝いて見えたグルメレポートも
発した一言に笑ってくれる会場内も
今じゃそれが当たり前になってしまって
下手でも歌うことが好きだった今じゃそれは過去形になって
家の隅に置かれた楽器は誰にも見られることなく埃を被ってしまった
(現実は、冷たい)
努力もしたつもりだった
下手な歌でファンを喜ばせることが出来るのか
何も言えなかった
年下のアイドル達が世間に出る度に何とも言えない黒い感情が胸を埋める
本当はきっと
歌番組にも出たかった
人前で歌って聞いて欲しかった
アイドル同士でぶつかって争いたかった
それなのに
「花安さーんスタンバイお願いしまーす」
片隅の楽器のように
アイドルという俺の肩書きに埃が積もる
(バラエティの、花安真吾)
笑顔の化粧を身に纏って扉を閉めた
さよなら
アイドルの俺
「今日もよろしくお願いしまーす!」