(星が綺麗だな)

話すことが苦手だと自己暗示のように考えていた

全然普通ですけどね

そう言われて気付く
自分が自分で勝手に追い込まれていたこと

いつもの帰り道
風は少し涼しくなった
髪も伸びてきたし癖毛が動きはじめてきた

忙しくなった毎日も少しずつ落ち着いてきて心も落ち着いてきた
前よりもゆとりがある心
黒く淀んで見えていた空が輝いて見える

「ベガ」

織姫を見つける
少し離れたアルタイルとデネブも見つける

誰もいない通りの真ん中で空を見上げて星を見つめる
つかの間の休息
これからまた仕事が忙しくなることを知らないまま右手に握ったスーパーの袋を握り直す

(明日は少し早めに起きてみるか)

それから日曜日あたりに有給でもとろう
そしたら本屋と美容院へ行こう
料理の本を買って髪を切るんだ
少しリフレッシュしたらまた仕事を頑張ろう

自分が彦星になりたいと思ったことはないが恋愛も悪い物ではないと思う
ただ縁がないだけで
少し憧れることもないことはない

「最近は調子が良いからな」

自宅へ足を進める
嵐の前の静けさに気づくこともないまま
仕事にまた打ち込もうと心を一新した俺の上では星に雲が掛かっていた


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