パァン
手に肉を切った感触はなかったただ目の前には自分を襲った死人が倒れている
「こりゃあ派手にやられたな坊主」
「だけどこれはお前の罪だ」
知らない男性が銃口から煙の出た拳銃をくるくると上へ投げながら歩み寄って来た
顔の傷を見て軽く頭を掻いた後そう言った
「坊主の名前も何も知らねえが、お前が今までにしてきたことは今日の恐怖と一緒だよ」
「このままお前を野放しにしているわけにはいかねーからな」
「署まで一緒に来てくれるか」
怒っている訳でもない
不思議な瞳を今でも覚えている
そこからは実にスムーズだった
18歳未満だった為か詳しくはわからなかった刑務所へは入れられなかった
家や両親、自分のことを話したが何も言われなかった
ただここで仕事をしろ
とあの男性に言われた
名前も今じゃ顔も覚えていないが命の恩人だ
あの日の恐怖も俺が人間へ与えていた恐怖が同じだと考えると身震いがした
「仕事をしないといけない」
何を言い出すんだコイツ
とでも言いたげな顔をしたそいつは予想通り俺の行く手を阻んだ
「いや、長く黙ってたと思ったら急にそれはねーだろ」
「現にお前は風邪ひいてんだよ、熱!熱出てんの!」
「これが他の奴らにうつってみろ」
「それこそ風邪ひいてようが働かないといけねーんだぞ?お前も、お前が風邪をひかせた奴らも」
酷く説得力のある彼の言葉に言葉を詰まらせる
何かしたいことを見つけるまで俺は仕事と向き合う、それしか持っていないから
だから
頼む
「心配しないでくれ…」