医務室のベッドに寝かされ体温を計ると今朝より熱は上がっていた
「俺に風邪が移ったら困るだろ マスクしろ」
投げつけられたマスクを手に取り装着すると顔の傷隠しがないことに気付く
(今朝そこまで頭が回ってなかったのか)
依頼の為だと無心で人を傷付けていた頃を思い出す
依頼主の発言に忠実に従い切っ先を人間へ常に向けていた
ある日は何人、ある日は何十人、日に日に手に掛ける人数は増え、手は真っ赤に染まっていった
十代だからと許される訳もなかった
そしてある死人に襲われたのだ
「何、こんな小せえ餓鬼かよ」
対面したこともない恐怖に腰が抜けたのを覚えている
「まあポイント稼ぎにはもってこいだな」
刃を向けられ頬に突きつけられる
血が頬を伝う
そして気がつくと右目に激痛が走っていた
「俺やっぱり人殺しのセンスないわ」
目が開かない
手が震えて大翔をしっかりと握ることができない
近寄って来た死人を見て死を察した
「こんな奴でもでけぇ大人殺してんのになーんでお前は生きてんだ」
「人殺しには死の鉄槌を、ってな」
ナイフを振りかぶったと同時に足が動いていた
地面を蹴って相手の懐に滑り込む
父から受け継いだ刀が自分を引っ張っているようにも感じた