少し寝ぼけ眼になったのを誤魔化すように両手で擦る
と真っ黒でいて細い影がぼやっと映る
「何やってるの」
そこから発せられた声に気づき一気に目が覚める
「ニナちゃん!」
毎日仕事で忙しい僕の大好きな女の子
一番のお客様になって欲しいと思いながらどこか無理だろうと踏んでいた
一番のお客は私だからと言ってくれた時は嬉しかったが自分の為に仕事に穴を開けるのはどこか気が引けた
「あなた私にだけチラシ、配らなかったでしょう」
ズイッとカウンターに身を乗り出して彼女は言う
きっと僕の考えてることを言ったら何言ってるのとまたいつものように怒られてしまうだろう
「きっと仕事休んでまで来てくれると思ったから…何だか僕の為にそんなことさせるのはあんまり…迷惑かなって思ったんだ」
「またそんなこと」
案の定予想通りの行動をしてくれてそれが何だか可笑しくて微笑む
何笑ってるのよと少しムッとした顔になる彼女にでも、と言う
「でも、チラシ配らなくてもニナちゃんがオープンの日を知ってくれてたのは凄く嬉しい」
それに約束通り一番のお客様だし、ね