『なーんかお前、最近仕事終わるの遅くね?』

(気のせいだ 黙れ兎)

なんて言って席を立ったのはいいが確かに最近体の調子が悪い

(頭痛なんかも多くなった)

始めは気のせいだと自分に言い聞かせていたが最近はどうもおかしい

(体が重い)

頭痛、気だるさ、体の重み…
眩暈こそまだないが着実に何かが体を蝕んでいるようにも思える

「何だ俺かよ…ビックリしたぜ…イケメンすぎて」

一人でブツブツ呟いている兎田を横目で通り越した
そろそろ新しいスーツでも買おう
長いこと着ているが何だか着心地が悪い
それほど多くの死人に手を掛けたのか
そう考えると苦笑しか出てこなかった

「230円が一点」

近くのスーパーで食材を買った
つい最近材瀬さん(幽霊だったが)にお会いした際に言われたことをふと思い出し、久しぶりに料理でもしようと思い立ったからだ

(お前がやりたいことをやればいいんじゃないか?)

やりたいこと、なんて今まで考えてみたこともなかった
ただひたすら与えられる仕事をこなして来たのだ
自分には仕事しかない

「だからやめるわけにもいかない」
「1380円になりまーす」

野菜や肉などで重くなった袋を握り締めて家への階段を登った

ガチャ

彼女もいない(欲しいと思わない)
趣味もない
やりたいことも、ない
仕事しか、ない

少し散らかった部屋を見て溜息をつく
今朝は洗濯もしなかったのだと時間のなさを実感した
衣類を洗濯籠へ放り込み、テレビをつけた

「今朝方見つかった死体には生々しい傷が…」

材瀬さんが亡くなったことで戦力を失った自分の班は仕事が日々山積みになっている
新人教育だとか色々やることがあるらしく自分に休みはない
仕事→家→仕事→家の往復をここ何ヶ月か

(やりたいこと)

とりあえず今はお腹が減った
風呂にも浸かりたい
洗濯も済ませなければいけない
それから掃除をして
そしたら今度は何をしよう

(結局は生活に必要なことしかないのか)

大分伸びて来た髪の毛を掻き上げて袋に手を掛けた

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