困った。
麗ちゃんに泊まりで出掛けたいと言われてから、自分は成人だしなあと迷った挙句押しに負けてこうして宿へ着いてしまった。
電車で不意にぶつかってしまった手を引っ込めると掴みとられて睨みつけられてしまった。
え、そんなに手がぶつかったのが嫌だったのかな、臭かった?
そしてそのまま彼女は俺の言葉を無視して、手を繋いで、俯いて、いつの間に?
「麗ちゃんよく寝てたね」
「…ごめん」
「いいよ、寝顔可愛かったからって何で叩いたのっ!?痛い!」
それから荷物を置いて、彼女に楽しんで貰おうって電車で調べたここ付近のお店とかを回った。
彼女も楽しそうだったし、来て良かったなあ!
(あ、ヤバイ)
美味しい夕飯も頂いて、写真も撮ったしTwitterにも上げた!
(いつもみたいに「画像検索乙」みたいそんなリプばっかりだけどまあいい)
それから待ちに待った温泉だと意気込んで浴場へ二人で足を運ぶ。
人もいなくて貸し切り状態でのんびり出来るぞとルンルン気分でじゃあまた後でと彼女と別れたのに。
「うおーーー!露天の湯ーー!!!」
大きい声で叫ぶとクスリと笑い声が聞こえて縮み上がる。
人いたのか…恥かしいと小さくすみませんと謝ると、大丈夫ですって、あれ?何か聞いたことある声。
もしかして、ってこれ、漫画みたいじゃない?
白い湯気の中に浮かぶシルエットにじわりじわりと近寄ると、あ、ヤバイ。
(オレンジ)
そして不意に相手が振り向く、あ、またヤバイ、俺、タオル…
「…ハイネ…?」
「ご、ごめん麗ちゃ、…あ」
慌てて驚いて立ち上がる、タオル、無いんだよね、見えちゃったかな。
「…座ろう」
思っていたより落ち着いた声でそう言われて、とにかく謝りながら少し間を離して隣に座った。
悶々と考える頭の中チラリと盗み見ると、彼女は何だか思い悩んだ顔で、それでいて真っ赤だった。
あ、彼女もまだ高校生だもんな。
いつもどことなく大人びている彼女に、安心していたのかもしれない。
そんな子供らしい一面を見て、可愛いなと素直に思うし、なんだろうこれは犯罪かもしれない。
「麗ちゃん、ごめんね」
「何で謝るの、何に謝ってるわけ」
「いや…んん、触りたいなあって思っちゃって」
真っ赤だ、時期はもう冬なのに彼女は紅葉している、今の僕、テンパってる。
「ハイネ」
「ん?」
「触っていいんだよ」
「…ん?」
何回も言わせないでって、彼女の言葉と同時に右手が掴まれて。
そのまま控えめな双丘に誘われる右手。
あ
これは
マズイ
それからいつの間に部屋に戻ってたけど、部屋にいたのは自分だけだった。
(とんでもない最近の女子高生…!)