「ぷは」

雨も上がって今は帰路に着いている。
とんでもないことをしたと頭を抱える自分の隣で、嵌め込んだ男はサイダーを飲んでいる。
所謂子供のラッパ飲みの癖が抜けない彼は、ぽんっと音を立てて唇をそこから離した。

野外
神社
浴衣
赤い唇
闇夜に映える白い肌

上げたらキリがないその要素たちがまだ瞼の裏に残っている。
もしも誰かに見られていたら?
聞かれていたらどうすればいい。

もしも見聞きされていたとして、鮮のストーカーになりでもしたらどうする。
耐えられない、どうにかしてしまうかもしれない。

悶々とどんどん別の話へすり変わる間に隣に誰もいないことに気づく。

「鮮?」

後ろを振り返るとしゃがみこむ姿。
どうしたと慌てて駆け寄ると小さく何かを呟いているようだった。
声を掛けると少し恥ずかしそうに顔を上げる。

(おい何で真っ赤なんだよ)

上げた顔は真っ赤で目は潤んでいる。
待て、さっき散々…いや、何でもない。
それでも正直な多感な時期の男だ、それだけは許して欲しい。

「腰…痛くなって、そしたら思い出した」
歩けないから抱っこして。

手を伸ばす鮮、女か。
でも、でもだって、お前いつもと違いすぎないか?
甘え方に磨きがかかって、いつからこんな我儘な甘え上手になっちまったんだ。
甘やかしたのは俺か?
そんな自問自答を繰り返しながら彼の腕を引いて腰も引き寄せる。
もういい、今日はお互い素直になろう。

正直あの一回なんかで足りるわけ無かった。
むしろもっともっと、そんな感じだ。
青い春ってのは恐ろしい。

「どこがいい」
「…何言ってんの」
「お互い素直になろうぜ、今日は」
「意味わかんない、腰痛いって言ってるのに」

引き寄せた腰をねっとり撫でると叩かれる。
そして仕返しとでも言うかのように、帯を一気に外された。
更に一瞬、パンツを下へずり下ろされる。
驚き軽く跳ね上がったところを何でこんなに器用なんだ、パンツは引き抜かれた。

「てめえ…!」
「オカズ」

いつの間にあのデカイ家に着いていたのか、鮮は腰を押さえながら少しの階段を駆け上がる。
急いで前を隠す俺を上から見ながら、鮮はそれを鼻に寄せてそう言った。

「やられたらやりかえす」
「こんなんで帰れねえだろうが!」
「青姦したうみくんはもう十分変態さんだよ」
「てめえでけえ声で何言ってやがる」
「だからこれは人質、暫く借りるね」

くんくんと効果音を出しながら鮮はまたニヒルに笑った。
とんでもないのを嫁にした。

「…それともパンツ交換でもする?」
「お前も大概な変態じゃねえか」
「しょうがないじゃん、好きなんだもん」

結局その後泊まりで朝帰りしたのは誰にも言えねえ夏の話。



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