パターン@

高校に入って一年が経った
特に大きな事件も無かったが俺のライフは既に0に等しい
冬休み、春休みを終えた俺は達成感と共にこれから始まる毎日に感じたこともない程の虚無感を抱いていた


それもこれも全て

赤点補習

というなの拷問のお陰である


これを母へ愚痴れば飛んできた箸が後ろの壁へ刺さる
味噌汁を茶碗へ注ぎながら俺をジロリを見据えると放つ一言

(クズ息子が)

清々しい朝に新学期の始まりに花咲せる学生達
そんな中俺は春に似つかわしくない黒く淀んだ心で自転車に跨がっていた

両親に男三人兄弟の五人家族の我が家は男所帯だ
しかし全ての権限は女王に握られている

先程の息子をゴミ以下で見る最早母親とは思えない女王から俺は逃げるように城を飛び出したのだ
世界を覆う程の力を持った魔王は何処へ消えたのだろう
ライフは0を無視してマイナスへ出掛けていった

俺はもう立ち直れない…


「…って何だよコレ!!!」

おはようの挨拶と共に俺の前へ現れたのはテレビ
差し出されたノートに綴られたのは訳のわからない小説
目の前のテレビはケラケラと甲高い声で笑い声を上げている

「いやーどうかなジャ●プの原作部門みたいのあるでしょ?それを意識して応募まで持ち込みたいなって思ってるんだけど」

テレビはなおもつまらない冗談を発しながら俺の横へ並び歩いている

「こんなの書いてる暇があるなら先にクラス振り分けでも確認してくれればいいだろ…」

と溜息を漏らせば、ああそうだねごめん、何て顔を濁らせ…

ている訳がない

「…え?」

そしてふと気づく

何故俺はテレビと会話しているのだ



おかしい、何かがおかしいのだ
恐らく今目の前にいる紛れもないテレビ頭は友人だ

こんな友人いたか
いや、いた覚えが一切ない

しかし驚き戸惑う俺を他所に同じクラスだった奴等はテレビと挨拶を交わしている
確かに聞き覚えのある声
しかし顔を一切思い出すことができない

顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔

(何を自然に会話してたんだ俺は…!?)

んーあー見つからないなー、何て画面を上へ向けながら奴は俺と自分の名前を探している
そうか彼が名前を見つけた時に見ればいいじゃないか
そうすれば名前がわかり彼の正体もわかるじゃないか

(まず声聞いて名前を思い出せない時点で友達として不安だよな)

あ、と声を発した恐らく2mはあるだろうテレビが俺の方を向く

「俺のも杉田くんのも名前あったよ!ほら!B組」

きゃっきゃと花を画面に映しながらテレビはそう言う

「悪ぃな任せっきりで…」

B組…

上から目線を下へずらすと自分の名前と少しまた下で親友の名前を発見した

(ああ本当だ杉田、中村、か)

…中村?
……中、村…

「お前中村だったのおおおおおおおおおお!?」

咄嗟に隣に平然と立っている俺の少し…いや大分変わってしまった親友の頭、いやテレビ頭を両手で挟み前後へ揺らす

ガタガタと音の鳴る頭

ピンクと白の水玉のネクタイ

上から下までしっかり着こなされた制服

それらに一切の見覚えがない
混乱している俺の頭に右ストレートがヒット!

「ぶべらぁおおおおおお痛ぇええええええぎいやぁああぁあぁ!!」

側頭部に握り拳が音速で衝突してきたことがあるだろうか

俺はあります

「朝からギャアギャア言わないの!!近所迷惑でしょ!めっ!」

画面に某×印のうさぎを映しながら俺へ手を伸ばす姿は服装こそ見慣れないもののかつての親友を思い出させた
俺はその手を取りしっかりと握る

「で?お前中村なの?」

立ち上がり埃を払いながらそう問いかけるとすぐに回答は返ってきた

「おはよう杉田くん俺ついに高校デビューしちゃった☆」

そして俺は回し蹴りを奴の横っ腹に思いっきりお見舞いしてやったのだった

「デビューするのが一年遅いんだよおおおおおおおおおおおおお」


パターン@
新学期に会った友人の頭部が昔を思い出させる様なテレビになっていた場合


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