パターンB

眠い
眠い
眠い

ひたすら眠い


新しいクラスにイマイチ親近感が湧かず俺は頭を机に押し付けている

(ついてない…)

とんでもないことに一番同じクラスになりたくなかった女と同じクラスになってしまった

(勝瀬)<

派手な色の髪をトップで団子にし、腕にはカラフルゴムを引っ掛けている
俺を越える馬鹿
これ以上関わる気は一切なかったのに何故また同じクラスになってしまったのだろう

(解せん)

2つ前の席に座ったピンク頭になるべくバレることがないようにジャージを頭から被る
前の席の男子は初対面
いきなり突っ込んで来たりはしないだろう

ねぇ…
えーっと杉田くん


「ホワッツ」
「先生、君のことガン見してるから…怒られちゃうよ」

小さな声でコソッと教えてくれた男子にありがとうと伝えて頭だけ起こす
ジャージは外さない
これでバレたら俺の一年はあいつに縛られる
とんでもない
そんなことが万が一にでも起きたりしたら俺の高校生活はもう終焉を迎え「杉田くーん!」

「うるさい中村っ!!」


HRが終わり机に頭を伏せたと同時に馬鹿なテレビが俺の名前をそこそこ大きな声で呼ぶ
どちらかと言えば俺の方が声が大きかったかもしれないがそれはまあいい
結果まだ勝瀬にはバレていない

「中村、これから俺のことはなるべく小さめの声で呼べ」
「なんで?」
「…俺の2つ前を見ろ、魔王がいる」
「…勝瀬さんか本当杉田くん苦手意識高いよね」
「頼む」
「まあいいよ、今日の放課後アイス付き合ってくれるなら」
「そんなもんいつでも行ってやるよ」

「何それ、楽しそう」

コソコソと話していた俺と中村
横から突然声が聞こえて来たかと思い身を震わせながら横を向くと

「…」
「あ、僕木内律って言うんだ、よろしくね」

「ビックリさせんなよおおおおおおおお「杉田くん!」うぉっやべっ」

「えっと…お邪魔だった?そうだったらごめんね…」

話しかけてくれたのは木内くん
女の子みたいな甘いベビーフェイスに少し長めの茶色い髪がまた女の子っぽく見せる

「いやいやいやいやそうじゃないんだけど…」

チラッと木内くんの影から前を覗き見てからクラス内をキョロキョロと見回してみると奴の姿は見当たらなかった

(こんなに気を張らなきゃいけないなんて思ってもなかったわ…)

改めて木内くんと向き合って自己紹介をする

「俺は杉田、こっちの…テレビが中村、よろしく木内くん」
「よろしくね!あと律でいいよ、前からそう呼ばれてたし」
「じゃあ律くんだね、よろしくよろしく!」

律くんの手を取ってブンブンと縦に振る中村
何だかその光景に気分が落ち着いてきた
別に同じクラスになってしまったと言ってまたどうこうする訳ではないんだ
少し過剰に反応しすぎたと反省して連絡先交換しようぜと携帯を向ける

「さっきから二人は何にキョロキョロしてるの?」
「あー律くんの前の席の」

別にもう隠すことでもないかと口を切る
折角新しく出来た友達だ(中村も似たようなものだけど)
大切にしたいし

「私がどうしたんよ」

テンポよく質問が飛んできたと思って素直に答えれば横で中村が震えるように俺の肩を揺さぶってきた

「あんまり関わりたくねぇなーって…「杉田くん!!!」…は?」

中村の指を指す方向にはその関わりたくない人の怒っている姿

「新学期早々失礼なこと言ってくれるなぁ杉田」

(こんの女ぁああああぁどこから湧いて出て来やがったぁああぁあぁ!!!!)

「え?中村くん…これは…?」
「危ないから少し後ろに居た方がいいよ」
「は?」

春休みの間もしつこく嫌がらせのメールを居れて来た女
俺の大切な長期休みを汚してくれた女
俺のテストの点数で競い合って来た女(不本意)
体力自慢をしつこくして来た女

兎に角この女のしてくることが一々腹が立つ
目線を合わせると火花が飛び散る

「漫画見たいな光景でしょう?」
「うん…」

「本当のこと言っただけだから」
「あんたに構ってくれる女なんて私くらいやで」
「お前のせいで寄ってこねぇんだよ!!」
「人のせいにしてる所でもてないんや!」
「うるせぇ!!!」


ギャイギャイ言い争って居れば廊下を通りかかった先生がまたかと言うような呆れ顔で教室に入って来た

「お前ら学年上がってまでまーた仲良く喧嘩かぁ」

『仲良くない!』

「あははよくあるよくある、まあ周りに迷惑かけない程度にやれよ、器物破損だけは許さないからな」

(器物破損だけかいいいいいいいいいい!!!!)

「兎に角!お前といると突っ込みの仕事が増えるからもうごめんなんだよ!」
「私に女友達がいると知らないで言ってるやろ杉田」


「ヨロシクオネガイシマス」

全く今年も楽しい一年になりそうだな
そう思って隣に座って唖然としている律くんに

「ピンクの髪の女の子は勝瀬ちゃん、すぐに仲良くなれるよ」

(関わったその分面倒なことになるけどね)

そう小さく呟いた言葉は誰にも届かないまま頭の中にこだました

パターンB
面倒な女友達に新しく女友達が出来ていてそれが唯一女の子と話せるという機会に直面している場合



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