パターンA
俺は大変混乱している
(中村は一年の時からの親友であり理解者だった筈だ…)
それが今は見覚えない姿に変わっている
そして新たな大きな壁に直面している
(まずい…まずいぞ…)
俺は今親友の顔を思い出せないでいる
回らない頭、元々馬鹿な頭をどうにかしてフル回転させる
思い出そうとする度に、親友との思い出が全てTVとの思い出に塗り替えられている
少し着崩れた風に着ていた制服は上から下まできっちりとしている
学校指定のネクタイはピンク地に白の水玉に変えられ、今まで着ていた裾の伸びたカーディガンはきちんと絞られた新しい物になっていた
(違和感しかない)
「いやあ本当は高校入ってすぐにやりたかったんだけど」
「メンテナンスに力入れてたら一年経ってて」
「まあ時間かけたお陰で良い仕上がりになったからさぁ!」
何も変わっていない自分を見て見ると安定したただのジャージ男である
(たかがTVにメンテナンスを一年間)
顔こそ見えないもののその画面からは真剣さが伺える
画面は真っ黒だが
(…ん?)
新しい教室へ向かいながらこの春休み中の出来事を話している
そんな中村の横顔…いや側面に目を向けると何やら不思議なボタンが並んでいる
…まさか自爆ボタン…!?
(自分の頭をTVに変えたことにより恐らく首、肩への重さは冗談じゃないはずだ)
(最悪の場合は首が折れたりして…)
(まてよ見たところ空気の出入りするところはあの…小さな穴…名前なんだっけ?とりあえずあそこからだけだ)
(窒息死なんて自業自得すぎるからきっと最期は自分で…)
…
「お前いつのまにそんなに武将みてえな男になったんだよおおおおおおおおおおおお!?」
突然俺の肩を掴み揺さぶって来たこの杉田という男は何を急に
確かに一年の頃とは様変わり、いやむしろ初めまして…?の粋だろう
何も言わずに容姿を変えた自分にあたふたしながらも安定の馬鹿さ加減を見せてくれるところが今までと同じ対応をしてくれているということだろう
(それにしても度を知らない馬鹿だな)
パターンA
変わった自分を戸惑いながらも同じ態度で接してくれる馬鹿が親友だった場合