あをい恋ごころ



源田幸次郎。帝国にいるなら知らないものはいない。名門帝国サッカー部のレギュラーにして選手の後ろを守るGKである。そんな彼とあたしはこの春、同じクラスで隣の席、というもの凄い繋がりを持ってしまった。彼は顔が整っていて、身長も高く、声も低音で当然のことながら女子にモテる。それだけではなく、気さくな性格もあってか男友達も多い。つまりは、男女共に人気があり、皆と仲が良いのだ。と言うことであたしが彼を好きにならない訳がなく、簡単に恋に落ちてしまった。もともと恋愛なんぞに興味がなかったあたしは彼とどうやって仲良くなれるだろうか、と試行錯誤する毎日で女子らしさを醸し出す技法は生憎持ち合わせていない。彼に話しかけるのがやっとの事なのだ。





*






「源田くんって、彼女いるの?」

前の時間が古典という眠気を誘発させる授業だったので、教室の大半の人が机とお友達になっている休憩中、意を決して聞いてみた。
「……いないぞ」

いきなりのわたしの質問に驚いたのか、少し間を置いて返事をした源田くん。というか源田くん彼女いないのか!やばい少し希望の光りが見えてきた。調子に乗ったわたしはもう一つ質問をする。

「そうなんだ?じゃあ好きな人はいるの?」

これでもし、いなかったら近いうち告白しようだなんて考えたのだ。そうしたらまだわたしにも付き合えるチャンスがあるかもしれないし。ポジティブに。

「………いるぞ」

…源田くんなんで溜めていったの。少し期待したじゃない。ほらもうやっぱり失恋かあ、そりゃそうだ。こんなわたしに源田くんみたいな素敵男子、釣り合うわけないじゃない。浮かれていたことが恥ずかしくなった。次の恋を探すとしようかな。源田くんみたいな男子がまた現れるかわからないけどね。

そんな一瞬のうちに思考を巡らせていたわたしに源田くんは続けて言ってきた。


「誰だか気になるか?」

「…少しね、どんなこがタイプか気になるわー」

なんてわたしは少しヘラリと笑って見せた。これでも精一杯の作り笑顔。このクラスのこかなあ、もしかしたら先輩かもしれない、そういえばサッカー部のマネージャーの先輩可愛かったなあ、その人かなあ、なんて考えていたら、源田くんがスッとわたしを指さした。えっ、いや、まさか、えっ、?

「わっわたし?!」

コクリと源田くんは顔を少し紅くしながら頷いた。と同時に毎日聞く本鈴が流れる。ガラリと数学の先生がドアを開けた。わたしはまだ顔の熱と心臓のはやい鼓動を残したまま数学の教科書をペラリとめくった。ちらりと源田くんを見遣れば、パチリ。目があった。途端、おかしくなってケラケラと二人で笑いあった。当然先生に怒られたのである。


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あをい恋ごころ/源田



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