透明な祈りを捧ぐ


カラン。あたしの足元に一つの缶。ラベルにはみずみずしい色合いでソーダと描かれている。周りはそれを連想させるようなシュワシュワとした泡のようなものをまとったデザイン。おいしそうだなあ、なんて思っていたら南雲くんがあたしの方へと近付いてきた。

「わりっ、その缶俺の!ゴミ箱に向かって投げたらかなり外しちまってさ、」

とあたしに話しかけ、ハハッと笑い、キレイな歯を見せた。それに対してあたしはどうでもいいよ、なんて毒を吐く。南雲くんは少しイラッとした表情を見せ、缶を拾い上げ、ゴミ箱に捨てるとそのまま涼野くんの方へといってしまった。

またやってしまった。
あたしは何故か南雲くんと話すと可愛げのない言葉ばかりをいってしまう。この原因がなんなのか自分にはよくわからないけど、あからさまに南雲くんばかりに冷たくしてしまうのは可哀想だなと感じていた。でもなかなか直すことは出来ない。とりあえず原因がわからないことにはなにも行動出来ないと思うのだ。しかし自分には到底理解出来ないこの感情は人に聞くしかないのかもしれない。ヒロトに聞いてみよう。




*




「ふふふ、君も甚だ鈍感だね。見ていて本当に飽きないよ」

とりあえずヒロトの所へ行き、来たいきさつを話すとそう言われた。鈍感とはどういうことだ。まあそんなことは置いておこう。さきはこのあたしの感情についてだ。

「今日の件もそうだけど、この前の月曜日に南雲くんがメアド聞いてきたときも軽くあしらっちゃって…」

そうあたしが付け足すとヒロトはブハッと吹き出した。なにがおかしいのかわからないあたしは疑問符をうかべる。ついにおかしくなったのかヒロト。

「そういえば月曜日は晴矢ちょっと機嫌わるかったな」

クスクスとまだ小さく笑い続けるヒロトはあたしの心に突き刺さるような言葉を言う。やっぱり気に障ったよね、と返せば、いやまあ怒ってる訳じゃないと思うよ、なんて。怒ってなかったらなんなのよ。


「…というかさ、人にメアドを聞くってどういうことかわかる?」

「えっ、とその人が気になるとか…?」

「正解!気にならなきゃメアドなんか聞かないよね。つまりさ、」

晴矢は君のことが気になってるんだよ、そうヒロトはさらりと言ってのけたけどあたしの頭では要領オーバー。気になってるってつまり、その、あれだよね。あたしのことが…。

「どう?今の気持ちは?」

口角をあげたヒロトがあたしの顔を覗いてくる。心臓が早鐘をうち、顔がみるみるうちに熱を帯びていく。あぁもしかして、あたし

「南雲くんがあたしを好いてくれて嬉しい、ドキドキする。あたしも南雲くんのことが好きなんだ…」

南雲くんに冷たく対応してしまう理由がやっとわかったというホッと安堵したと同時に恋をしていることに気が付いてしまった胸の高鳴りがとまらなくなる。しかも両想いときたもんだ。

「やっと自分の気持ちに気付いたね、長かったよ、もう」

じゃあ俺、用があるから帰るね、といってヒロトは颯爽と放課後で誰もいない教室をさっていった。
わたしも帰ろうと思って椅子から立ち上がろうとしたとき、ブブブッと携帯のバイウ゛が鳴った。誰からだろうと開いてみてみる。







  From:南雲くん
  Sub:無題
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  言いたいことがある。
  まだ学校に居たら
  下駄箱前に来てくれないか。




わたしは走り出す。当然下駄箱前に向かって。
















  To:南雲くん
  Sub:無題
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  大丈夫
  今からいくね
  すぐつくから待ってて
  教室だから今!




(だ い す き)


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透明な祈りを捧ぐ/晴矢


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