ヒロイン2とシカマルは付き合ってない。夢じゃないよね?さっきの光景が頭をよぎったけど、ヒロイン2が違うと言うんだから違うんだろう。嘘を吐くような娘じゃない。この事実を一刻も早くキバに教えてあげたい。でも、本当…夢とかじゃないよね?


「コーヒー牛乳早飲み対決だってばよ!」
「おぉーっし!お前らには負けねェ!」
「飲食系勝負で僕に勝てると思う?」


待ち合わせ場所から聞こえてきたそんな男の子たちの会話。よーい、スタート。シカマルのめんどくさそうな合図で3人が瓶に口を付ける。シカマルの浴衣姿…!…じゃなくて、そんなことしてる場合じゃないんだってェェ!

スパァ――ン!

ブフッ!肩を叩くとキバが口からコーヒー牛乳を吹き出す。もしかしたら少し力みすぎてしまったかもしれない。でも、だって、一大事なのだから仕方ない。


「痛ってーな!!何すん」
「いいからちょっと来て!!」
「ちょ…おい、ヒロイン1!?」


他の3人からも注目されてしまったのが恥ずかしくてキバの浴衣を掴むと猛ダッシュでその場を後にした。でも…(キバが)痛いってことは、さっきのは夢じゃなかったんだ!


* * *


さっきの場所から少し離れたバルコニーの様な場所。ここまで来れば誰にも見つからないだろうと、掴んでいたキバの浴衣から手を離し正面に向き直る。


「○※@▲◇…ッ」
「いや、わかんねェよ」


思ったより息が上がっていたのと、興奮していたせいで上手く喋れなかった。もどかしい……頑張れ自分!


「あのね…つ、付き合ってないんだって!」
「はぁ?」
「だから、ほらぁぁあ!あの二人…っ」


やっとわたしの言葉を理解したらしいキバの表情はみるみるうちに花が咲いたような笑顔へと変化していった。


「…マジでか!!」
「マジ!」


うずくまる勢いでガッツポーズをしているキバは本当に嬉しそうだ。わたしがえらそうに言うことじゃあないけど、キバにならわたしの大切な友達を任せてもいいと思える。彼女のことを想っているという点でキバに敵うやつなんかいないだろう。


「じゃあ俺にもまだ望みはあるってことだな!」
「うん!」


力強く頷けば、よーし!と自分自身に気合いを入れて「さんきゅーな!」と走っていってしまった。片思い仲間の背中に密かにエールを送りつつ、自分自身も頑張ろうと拳をにぎった。