食事を終え、少し休んでから露天風呂に向かう。
混浴がないと知りガックリと肩を落とすキバとナルトをシカマルが面倒臭そうに男湯に連れて行き、いつの間にかジュースを手に持っていたチョウジが後に続いた。


出たら廊下集合ね、と男子達に声をかけるサクラを先頭に女子達も女湯へと向かう。
そそくさと体を洗い温泉に浸かった。露天風呂特有のお湯と空気の温度差に終始興奮気味の中始まったのは、女子の定番の話題だった。


「そういえば、ヒロイン1は好きな人いないの?」
「えっ…」


突然のサクラの質問にヒロイン1はどきりとする。


「いるんでしょー?白状しなさい!」


サクラに便乗したいのがニヤニヤと近づいていくと、反応に困ったヒロイン1はバシャバシャと水しぶきをあげながらヒロイン2に助けを求めた。


「え、ちょ、えっ…ヒロイン2助けてぇぇ!」
「ん?なに?」
「あっ、こら!逃げんじゃないわよ!」
「言わない!絶対言わない!」


意地でも聞き出したいいのが後を追えば、ヒロイン1はヒロイン2の後ろに隠れた。盾にされたヒロイン2は、意味がわからず眉間に皺を寄せたままだ。


「じゃあヒロイン2は?」


サクラによって突然自分を標的にされたヒロイン2はますます眉間の皺を深めた。
温泉の効能、とやらを真剣に読んでいたヒロイン2には3人の話は微塵たりとも耳に入ってなかったのだ。


「は?だから何?」
「好きな人よ!いるんでしょ!?」


ニヤリ、いのがヒロイン2に詰め寄るが、ヒロイン2は「ナイショ」と言うだけで何も言わなかった。

すっかりヒロイン2とシカマルは付き合ってると思っていたし、それはもう暗黙の了解なんだと勝手に思っていたヒロイン1は、好きな人を隠そうとするヒロイン2に疑問を覚えた。
付き合ってるとはヒロイン1が勝手に思っていただけで、本人の口から聞いたわけではない。でもさっき部屋に戻った時の状態といい、一体どういう事なんだとヒロイン1はただ混乱するばかりだ。


付き合ってるのかどうか、もしかしてハッキリ聞くべきなのではないかとヒロイン1はヒロイン2に背を向けたままぶくぶくと顔半分まで温泉に浸かった。


* * *


一方その頃男湯ではキバとナルトが女湯を覗こうと、男湯と女湯の間を遮る仕切りをよじ登ろうとしていた。
閃いた!とナルトは近くにあった木に登り、仕切りに飛び移れないかと企む。


「んー、あともうちょっとなんだってばよ…!」
「そうなんだよなー…ん?」


続いて登ろうとするキバは、ふと考えた。女湯を覗きたい気は山々なのだが、自分の好きな人の裸を他の人に見られるというのはどうなのだろう、と。


「ちょっ、待てナルト!」
「おわっ!何だってばよ!?」


キバが足をグイと引っ張ると、太い枝にしゃがんでいたナルトは引きずられてそのまま先程まで足場にしていた枝にぶら下がり、地面にストンと落ちた。

そんな二人を湯に浸かりながら見ていたシカマルが「つーかお前らサクラに殴られんぞ」と忠告をする。


「だ、だよな。うん。やめとこーぜナルト!」


ナイスシカマル!と心の中で親指を立てるキバは不自然ながらもナルトを止め、シカマルとチョウジのもとへ行こうとナルトに背を向けた。


「えー、キバってば何ビビってんだってばよ!」


ナルトの一言に、ピクリとしながらキバは振り向く。


「別にビビってねーし!」
「ビビってるってばよ!」
「ビビってねーっつってんだろ!」


まんまとナルトの挑発に乗せられたキバは再びその仕切りを登ろうと競い始めた。もう女子は脱衣所に行こうとしているのも知らずに。


「……勝手にやってろ」


すっかり呆れ果てたシカマルは、塗れたタオルを額に当てて空を見上げる。


「ねぇねぇシカマル、今日は満月だよー」


キラキラ光る星ばかりに見とれていたが、チョウジの一言で月の方に目をやる。
何とも風情のある景色の中、背後で騒ぐ二人の声が夜空に響いた。


* * *


覗き見しようとする二人が騒いでる中、女湯では湯冷めする前にと脱衣所へと向かっていた。
サクラといのが体重計を見つけて計っているのをよそに、ヒロイン2は自分のロッカーへと向かい体を拭く。ヒロイン1も後を追い、体を拭きながら先ほどの話を切り出そうとしていた。


「ねぇねぇねぇ、」
「なに?」


ヒロイン1は不器用な手つきで浴衣を羽織り、やはり聞くしかないと決心する。
今聞かないと、一生聞けない気がしたから。


「ヒロイン2って、シカマルとつ、つ、つ、付き、あ」
「付き合ってないよ。何であんなヤツと」
「あんなヤツ!?」


付き合ってるどころかシカマルを侮辱されたことに驚くと同時に、とんでもない勘違いをしていた事に気づく。
新事実が発覚したとキバに伝えなくては!とヒロイン1は、適当に着た浴衣に濡れた髪のまま脱衣所を飛び出した。


「え、何!?てか髪…!」


ヒロイン2が声をかけた時にはもう遅く、ヒロイン1の姿は見えなくなっていた。
体重を計り終わったサクラといのに、どうしたの?と問いかけられるが、わからないと答えるしかなく、先に待ち合わせ場所にいるだろうという事で何となく解決した。

ヒロイン2は濡れた髪を乾かしながら、髪も乾かさずに何だったんだと鏡越しに見える出入り口を見つめていた。