数々の店が建ち並ぶ繁華街に着いて真っ先に騒ぎ始めるのは言わずもがな、である。


「面白そうな店がいっぱいあるってばよ!」
「本当だー」
「行ってみよーぜ!」


今にも走り出しそうなナルト・ヒロイン1・キバを制したのはサクラの「はぐれたらどうすんの!」と言う戒めの言葉だった。が、その直後。


「ちょっとサクラ、あれ見て!“恋愛成就”だって!!」
「え、何?どこどこ!?」


いのと2人で飛び出して行ってしまう彼女を見て3人が「えぇっ!?」と声を揃えたのは言うまでもない。

仕方なく2人を除く6人で、キバとナルトを筆頭に店を回ることにした。賑やかに事欠かない2人の後ろでチョウジとヒロイン1はあれが美味しそうだの何だのと食べ物の話題で盛り上がる。更にその後ろではシカマルとヒロイン2が賑やかな奴らだと、笑いを零す。


「あ、くつヒモ…」


突然しゃがみ込んだヒロイン2に気付いて立ち止まり「大丈夫か」とシカマルが声を掛けると、くつヒモを結びながら「へーき」と短い返事が返ってくる。ヒロイン2はくつヒモを結び終え、立ち上がると首を傾げる。


「あれ、みんなは?」


その言葉にシカマルがはっとして先ほどの進行方向を見るがそこには誰一人として残っていなかった。


「……めんどくせぇ」



* * *



「キバ!キバ!見てみろってば!」
「すげー!」


温泉街と言えば街中に湧き出ている温泉。あちこちから立ち上る湯気にキバとナルトは興奮を押さえられない模様。


「あんたたちどこにいても煩いから見つけやすくて助かるわー」


そんな2人に恋愛成就のお守り、その他恋愛グッズを手に入れてご機嫌ないのとサクラが近づく。


「あーサクラちゃん!!酷いってばよ!!自分ではぐれるなって言ったくせに!!」
「えーと…そうだったかしら?」

「おーい、みんなー!」


ナルトとサクラのやりとりにいのが、まぁいいじゃないと宥め役をかって出たところでヒロイン1と呆れる程の温泉饅頭を抱えたチョウジも合流。


「何美味そうなモン食ってんだよ」
「温泉饅頭だよね、チョウジ」
「むぐむぐ」
「ふーん」


一口くれよ、と手を伸ばしてくるキバからヒロイン1は必死に温泉饅頭を守る。たくさん持ってるチョウジにもらいなよ!、という彼女の言葉に今度はチョウジが反発した。やだよ!キバ自分で買ってきたら!?3人がぎゃーぎゃー騒ぐのを余所にサクラはきょろきょろと辺りを見回していた。


「そう言えばシカマルとヒロイン2の姿が見えないわね」


サクラの声を聞いたキバとヒロイン1の動きがぴたりと止まる。そして2人もきょろきょろと辺りを見回すがそれらしき人物は見あたらない。


「なんだぁ?2人して迷子かよー!?」
「はぐれたふりして2人で抜け出したのかもねー」
「「!」」


楽しそうないのとは対照的にキバとヒロイン1の顔はひくひくとひきつって、お互いの顔を見合わせる。


「まさか、な?」
「あの2人に限って、ねぇ?」
「あら、でもシカマルとヒロイン2ってなんか似た者同士って感じしなーい?」


更に追い討ちをかけられた2人は自分の顔が青ざめていくような感覚に陥る。信じたくないけど、実際あの2人の姿は見あたらない。似た者同士というのにも納得。いのの言葉を完全に打ち消せるだけの根拠も自信も、今のキバとヒロイン1は持ち合わせていなかった。


「キバ、シカマルから何か聞いてないの!?」
「シカマルはそういうの自分から話さねぇからな。つか、お前こそ何か聞いてねーのかよ!?」
「聞いてない……」


あの2人なら大丈夫、という他4人の意見に不本意ながら従うしかないキバとヒロイン1がその後観光どころでなかったのはいうまでもない。