てきぱきと座席の指示を出すサクラといのの指示によってわたしの隣の席にはシカマルが座ることになった。行きと同じでヒロイン2が隣だと思ってたのに…どうしよう!?2時間も何喋ったらいいの!?と思わず持っていたタオルに顔を埋める。
…あ、でもシカマルの事だから新幹線内では寝てるかも。…ってことはシカマルの寝顔を間近で見るチャンスなんじゃ…!?そこまで思考が行き着いた所でタオル越しに頭に衝撃を感じた。


「いたっ!?」
「何にやにやしてんだ」
「…してた?」
「してた」


衝撃の正体はシカマルの拳だった。どうやらわたしは無意識のうちににやにやしていたらしい。えへ、と笑って返したら「そのにやけ癖治んねぇの?」と呆れたような笑顔を向けられた。指摘されたばかりだったのにやっぱり頬が緩んだ。昨日も言ったけどわたしはシカマルのこの顔が大好きだ。

そんな幸せな思考に浸っていると後ろからバチンッ!!!という音とヒロイン2の大きな声が聞こえてきてビックリした。隣のシカマルもわたし程ではないが驚いている。

キバは今度は何をやらかしたんだろう?それにしてもヒロイン2の大きな声を一日に2回も聞けるなんて。キバもなかなかやるじゃないか。あの娘に大きな声を出させた男はわたしが知る限りではキバが初めてだ。


「ふふっ」
「今度は何笑ってんだよ」
「仲良いなと思って」


シカマルの問いかけに座席のわずかな隙間から見える後ろの二人を指さす。


「凸凹なのにな」
「凸凹だからだよ」


後ろの2人から視線をシカマルへと移すと、シカマルも同じように隙間から後ろを見ていたため思っていたよりもずっと近くに顔があった。


「近ぁッ!!」


ばっと素早く身を引くと、「いちいちビビり過ぎ」と腕を引かれて元の位置に戻される。心臓はまだばくばくと騒がしい。そんなわたしとは対照的にふぁ〜と欠伸をして眠そうなシカマル。


「寝る」
「ぅえ!?ちょ、シカ…っ!?」


そう一言だけ呟いてぽすんとわたしの肩に頭を乗せると、腕を組んで目を閉じ眠る体勢を作った。これはもう寝顔観察どころじゃない。呼吸が止まりそうだ。